シリーズ:KCS⑤ KCSを活用したコールセンターの事例とは

ナレッジを中心に据えたコールセンターの運営をするのが「KCS」であり、サポート業界において先進的な米国ではナレッジマネジメントの手法として「KCS」が取り入れられています。
これまで4回のコラムでKCSについて解説してきましたが、今回はそのKCSを実際に取り入れて成果を上げている米国のコールセンターの事例についてご紹介していきます。
24時間対応のコールセンターの課題と目標
ここでご紹介するのは、米国のHP社での事例です。
米国のHP社では、24時間対応のカスタマーサポートセンターを運営しています。ここでは、HP社が取り扱っているデスクトップPC、ノートPC、プリンターなどのカスタマーサポートを実施していますが、運用する中で以下のような課題を抱えていました。
- お客さまの技術レベルが高くなってきており、要求されることも増えてきた
- 製品が増加してきており、1製品の機能の変化も非常に多い
- 世界中から問い合わせがあるため、統率を取らなければならない
そんな中、コールセンターとして「KCS」を軸に据えて次のような目標を設定することになります。
- 世界中で利用できる1つのナレッジベースを作成しよう
- ナレッジベースは問題解決を通して開発するようにしよう
- お客さまとの情報共有をできるだけ早く行うようにしよう
KCSに沿って具体的に実施したこと
設定した目標に対し、具体的に実施したことは次の通りでした。
- (1)KCSトレーニングとKCS認定
コールスタッフ全員にKCSの理解を促進するため、まずは教育を施しました。そして、理解度に応じてKCS認定を付与していきました。 - (2)コンテンツの掲載と品質管理
コンテンツをWebに掲載するにあたっては、とにかく「スピード」を意識したといいます。まずは掲載し、日々の運用の中でブラッシュアップを図る。さらに定期的にサンプリングも実施し、品質を向上させる取り組みにも注力していきました。 - (3)コールスタッフをKCSで評価
コンテンツの評価システムを導入し、「お客さまがコンテンツをどれくらい問題解決に役立てているか」でコールスタッフを評価するようにしました。これにより、スタッフのコンテンツに対する姿勢がさらに変化していきました。 - (4)KCSの組織化
KCS認定の最上位を「ナレッジチャンピオン」とし、HP社の他国のコールセンター同士で国際コミュニティーを作りナレッジチャンピオンたちで運営していきました。また、KCS認定のリーダークラスたちも国内でチームを作り、コンテンツを向上させるための議論を加速させていったのです。
KCSを推進したことで得られた効果
こういった取り組みをしてきた結果、どのような成果が得られたかというと、まずは1人あたりのコール処理能力が25%改善したということです。さらに、一次解決率も増加しエスカレーション率は減少していったようです。
1人あたりの生産性が高くなっていきますと、人件費を抑えることもできるようになります。結果、ROI(費用対効果)は15倍に増加しました。
また、解決率の増加やエスカレーションが少ないことからお客さまより信頼を得ることにもつながり、ビジネスとしても多方面へ拡大していくことになったようです。
KCSについて改めてまとめると、「ナレッジ」を中心に据えてサポートを行うことが重要であり、「コンテンツ作成」は最重要という位置付けだということがお分かりいただけるかと思います。
コンテンツを作成して終わりではなく、コンテンツは“発展させていくもの”と理解しなければいけません。また、チーム<センター<組織 と、取り組む規模が大きいほどダブルループプロセスが回りますので効果的になるというわけです。
今回の事例のように、コールセンターがKCSを取り入れていくだけでなく、“KCSを使いこなしているアウトソーサーを活用する”という選択肢もあるかもしれません。
新たに社員を採用しようと時間を費やすのではなく、KCSを使いこなすアウトソーサーをうまく活用しながら自社の生産性を高めるということも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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