シリーズ:KCS② ナレッジをコンテンツに発展させる「KCS」

前回のコラム(シリーズ:KCS① ナレッジを中心とした「KCS」でコールセンターは変わる)で説明させていただいた通り、ナレッジを中心に据えたコールセンターの運営をするのが「KCS」であり、サポート業界において先進的な米国ではナレッジマネジメントの手法として「KCS」が取り入れられています。
今回のコラムでは、KCSの具体的な話に入る前に、そもそもナレッジとは何なのか、ナレッジマネジメントとは何なのかを説明します。
そして、KCSの大きな流れを象徴するといわれる「ダブルループプロセス」とは何なのか、についても解説していきたいと思います。
そもそもナレッジとは何なのか
“ナレッジ”というものについて、一般的には次のような定義がなされています。
「ナレッジとは、あることについて熟知・精通した状態や事実であって、経験や連想を通じて得られるものである」
“経験を通じてあることについて熟知した事実”ということですが、カスタマーサポート分野におけるナレッジというのは具体的に次の2つに分類されます。
- (1)情報提供型ナレッジ
内容が決まっており、有限の要素です。コールセンターやインフォメーションセンターで併用されることが多く、情報ソースは企業内がもとになっています。 - (2)問題解決型ナレッジ
問題を解決するための情報であり、要素は無限です。ヘルプデスクが作成するケースが多く、情報ソースは企業内だけでなくヘルプデスクがもとになっていたり顧客がもとになっていたりします。
多くの企業ではこのような「ナレッジの2つの分類」に気が付かず、同様に扱おうとして複雑になっているケースが散見されます。今回取り上げている「KCS」というのは、2つ目の“問題解決型ナレッジ”に対して有効な手法です。
「ナレッジ」を「マネジメントする」とはどういうことか
「ナレッジマネジメント」という言葉もよく聞かれますが、具体的にはどういうことなのでしょうか。
直訳をすると「知識管理」ということになります。知識については前項で「有限の情報」や「無限の問題解決手段」であると書きましたが、その「知識」をセンター全体や会社組織内で共有化したり活性化させたりすることで、組織の競争力を向上させる手法が「ナレッジマネジメント」です。
企業において重要な4つの経営資源として「人」「モノ」「金」「情報」がよく言われています。これらに加え、5つ目の経営資源として「知」を重視しているのが「ナレッジマネジメント」といえるでしょう。
組織の中で、従来は特定の個人が経験して蓄えていた「知」を「暗黙知」と呼び、その暗黙知を共有して全体的な生産性を向上させようという管理手法です。
暗黙知という名前の通り、これまでは「言語化して伝えられるものではない」と考えて共有することは難しいとされてきましたが、IT技術の進歩により、さまざまなナレッジマネジメントツールも提供されるようになってきました。
ナレッジをコンテンツに発展させる「ダブルループプロセス」
ナレッジを中心に据え、それらをコンテンツに発展させていくのが「KCS」ですが、KCSの手法としてのゴールはまさに「見つけやすく使いやすいナレッジ」を作成し、コンテンツとして発展させることです。
その一連の流れを「ダブルループプロセス」と呼びますが、その「ダブルループプロセス」というのは、SOLVE(解決)ループとEVOLVE(発展)ループの2つのループのことを表しています。
- SOLVE(解決)ループ…「個人レベルでの問題解決」におけるワークフローです。
- EVOLVE(発展)ループ…「組織レベルでの品質向上プロセス」を示しています。
個人と組織での2つのプロセスを経て、ナレッジをコンテンツへと発展させていくのがダブルループプロセスというわけですが、それぞれのプロセスで具体的にどういったことを考え、実行していくべきなのかについてはこちらのコラム(シリーズ:KCS③ KCSの「SOLVE」ループでは何をするか)で解説していきます。

出典:HDI-Japan