【健康診断】会社の負担はどこまで?対象範囲や費用を知ろう

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【健康診断】会社の負担はどこまで?対象範囲や費用を知ろう

【健康診断】会社の負担はどこまで?対象範囲や費用を知ろう

健康診断は、企業や組織が健全に運営するために必要な義務のひとつです。

健康診断の費用は、基本的に会社や組織が負担します。ただ、雇用契約や健康診断の費用の複雑さから、この費用負担の問題で頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、健康診断で企業や組織がどこまで負担するのかを分かりやすく解説してまいります。
組織管理の一環として、ぜひお読みください。

1. 健康診断は会社や組織が果たす義務のひとつ

健康診断は会社や組織が果たす義務のひとつ

健康診断は、企業や組織が果たさなくてはならない義務のひとつです。
健全な運営を維持するためにも、「従業員の健康」を守る必要があるのです。

健康診断には「実施義務」と「結果の管理義務」がありますので、企業や組織は“条件を満たす従業員”には必ず受診させなくてはなりません。もし実施しない場合には、罰金刑を科されてしまう場合もあります。

ですから、健診は「受けさせればよい」というものではありません。従業員の条件にあわせて適切な健康診断を受診させる必要があるのです。健康診断の負担範囲や種類・費用に関する知識については、必ず押さえておくようにしましょう。

2. 健康診断の負担の範囲はどこまで?従業員・役員・家族

それでは、具体的に健康診断の対象となる従業員をみていきましょう。
対象については、法律で定められています。また、法律で定められた対象範囲から外れる人でも、企業や組織を健全に運営することを目的とした場合に、健康診断を受診した方がよい従業員もいます。

2-1. 正社員は全員対象

正社員は、全員が健康診断の対象範囲となります。
健康診断の対象は「常時使用する労働者」であり、雇用期間が定められていない正社員は労働時間や業務内容にかかわらず当てはまることになります。

健康診断結果には保管義務があり、個人票を作成して5年間は保管しなくてはなりません。保管には従業員の同意が必要になりますので注意しましょう。

また、従業員が50人以上を超える場合は、健康診断の実施に加えて所轄の労働基準監督署あてに「定期健康診断結果報告書」を提出する義務も発生します。

これら「診断結果の保管」と「報告書の提出」については、従業員の雇用形態に関係なく“健康診断を受診する条件を満たした従業員すべて”が対象となる義務です。「報告書の提出」が従業員数によって変わる点については、注意が必要でしょう。

2-2. パート・アルバイトは条件次第で対象

パートやアルバイトなどの短時間労働者の場合、以下の条件を満たした労働者が健康診断の対象となります。

【短時間労働者における健康診断の実施条件】

  • 常時使用する労働者であること
  • 契約期間が1年以上の労働者
  • 上記の条件を満たした労働者で週の労働時間が正社員の4分の3以上
  • 上記の条件を満たさない場合でも週の労働時間が正社員の2分の1以上(努力義務)

これらの条件を満たした労働者であれば、短時間労働者であっても正社員と同じように健康診断を受診させなくてはなりません。
また、健診の実施だけでなく、結果の保管や報告義務についても正社員と同じになりますので、対応するようにしましょう。

2-3. 派遣社員は派遣元企業が実施・負担

企業の業務形態により、派遣社員下請け企業の社員など、自社ではない従業員とともに業務を遂行する場合があります。この場合に、「どこが派遣社員や他企業の社員の健康診断義務を負い、費用を負担するのか」と悩まれる担当者も多いでしょう。

健康診断の実施義務については、従業員と直接労働契約を結んだ企業や組織が負うことになっています。
そのため、派遣社員などの場合は、派遣元の企業や組織などが健康診断を実施し費用を負担することになります。派遣先である企業や組織は、派遣社員や下請け企業の社員に対する健康診断義務は負いません。

もし、何らかの理由で派遣社員や下請け企業の従業員の健康診断結果が必要な場合には、従業員本人の許可が必要になります。この場合、「派遣元の企業や組織」と「従業員本人」に対して、その旨を伝えなくてはなりません。

2-4. 役員の場合は役職次第で対象になる

企業や組織の役員は、雇用契約を結んでいないかぎりは従業員に含まれませんが、会社で業務を担う人材であることに代わりはありません。ですから、役員の場合には役職の内容によって健康診断の対象になるかどうかが変わることになります。

例えば、「工場長」など従業員として業務に従事する可能性がある役員であれば、健康診断の対象になります。一方で、「代表取締役」や「社長」など、いわゆる“事業主”としての仕事が主となり、業務自体に従事しない役員は対象外です。
健康診断の対象はあくまでも「常時使用する労働者」であるため、事業主に該当する役員は義務の範囲外なのです。

しかし、事業主だからといって健康管理に対する義務がまったくないわけではありません。法律上の義務はなくても、定期的に健康診断を受診し、実務上・経営上のリスクを減らさなければならないはずです。つまり、「企業や組織を健全に運営する」という観点からみると、義務の対象外である役員であっても、健康診断を受診しておいた方がよいことには変わりないのです。

2-5. 従業員の家族は対象外

最後に、従業員の家族ですが、健康診断義務の範囲外となります。
従業員の家族や配偶者は、企業や組織と直接労働契約を結んでいませんので、健康診断義務が発生しません。
企業や組織が健康診断を行うのは、あくまでも『労働契約を結んでいる従業員だけである』と覚えておきましょう。

3. 健康診断の種類と時期

健康診断の種類と時期

続いては、健康診断の種類と時期について解説していきましょう。
健康診断には、大きく「一般健康診断」と「特殊健康診断」があります。それぞれ健康診断を行う目的や時期も異なりますので、注意が必要です。

3-1. 一般健康診断の種類とタイミング

すべての業種と企業・組織が対象になる健康診断が「一般健康診断」です。
一般健康診断には5つの種類があり、それぞれタイミングが異なります。細かな違いについては、下記の表をご覧ください。

【一般健康診断の種類・タイミング・対象】

健康診断の種類健康診断を行うタイミング対象となる従業員
雇入れ時の健康診断従業員を雇入れするとき条件を満たすすべての従業員
定期健康診断常時使用する従業員に年1回条件を満たすすべての従業員
特定健康診断・6か月ごと
・配置換えのとき
深夜勤務など特定の業務に常時従事する従業員
海外派遣労働者健康診断出国時および帰国後国内業務に従事させるとき海外に6か月以上派遣される従業員
給食従業員の検便検査・雇入れ時
・配置換えの時
事業に付随する食堂や炊事場における給食業務に従事する従業員

従業員は、それぞれ健康診断を受ける際の条件が違うため、事前に確認しておきましょう。

3-2. 特殊健康診断の種類とタイミング

もう一つの「特殊健康診断」は、有害な物質に接触する従業員に対して実施しなくてはならない健康診断です。
健診対象や行うタイミングはほとんど同じですが、該当する有害物質の内容により検査内容は大きく異なります。

【特殊健康診断の種類・タイミング・対象】

対象となる有害業務健康診断のタイミング対象となる従業員
高圧室内業務
放射線業務
特定化学物質業務
石綿業務
鉛業務
四アルキル鉛業務
有機溶剤業務
・雇入れ時
・有機溶剤業務
・6か月ごとに1回
該当する有害業務に従事する従業員
粉じん作業
(じん肺検査)
・じん肺の所見がない場合は3年に1回
・じん肺の所見がある場合は1年に1回
該当する有害業務に従事する従業員

この特殊健康診断は、労働基準監督署が指導する内容のひとつです。健診を行っていない場合には指導の対象となりますので、実施する際は抜けやもれがないよう細心の注意を払って行うようにしましょう。

4. 健康診断費用の会社負担はどこまで?負担する費用の基準

続いて費用負担についてみていきます。企業の義務として規定されている健康診断において、企業はどこまでの費用の責任を負うことになるのでしょうか。

そもそも、どの程度の負担が生じるのかについて明確化されていなければ、企業は予算の計画を立てることができません。また、従業員からの要望に対し、どこまで対応しなくてはならないのか不明瞭では対応が難しくなってしまいます。事前にしっかりと確認しておきましょう。

4-1. 原則は会社が検査項目に応じて費用を負担する

原則として、従業員の健康診断は、雇い主である企業や組織が行い費用を負担することになっています。

健康診断は、前述した通り「一般」「特殊」の大きく2つがありますが、いずれも検査項目が決められており、必要な検査にかかる検査料を医療機関や健診機関に支払う形になっています。ただし、検査項目や検査の種類に応じて支払う費用は変化しますので、その点は注意が必要です。

4-2. 健康診断は医療保険が使えない

一般的に、病気やケガなどで医療を受ける際には、医療保険を使います。しかし、健康診断は医療保険の対象外でありますので、すべて自己負担となります。

医療保険が使える場合には、国が定めた価格と計算方法で医療費を算定します。しかし、対象外である健康診断は『自由診療』、つまり医療機関や健診機関が自由に検査料を設定できる医療行為です。価格設定がそれぞれ違いますので、健診を依頼する際には価格を確認しておく必要があるでしょう。

明確な価格が定まっているわけではありませんが、概ね5,000~15,000円前後で健診を行っているところが多いといえます。費用についてあらかじめ詳細を知っておきたい場合には、医療機関や健診機関に見積もりを出してもらうようにしましょう。

5. 健康診断費用に関してよくある質問

最後に、健康診断費用に関して「よくある質問」と「回答」をご紹介します。
健診を実施する際にお役立てください。

5-1. 従業員が健康診断を受ける機関を指定した場合の費用負担は?

従業員から、「健康診断を受ける医療機関を変更したい」「健診機関を指定したい」という相談を受ける場合があります。
このとき、指定された機関が自社と健康診断の契約を結んでいない場合、従業員に費用を一時的に立て替えてもらわなくてはなりません。

立て替えの一般的な手順としては、従業員に自費で健康診断を受診してもらい、領収証を用意してもらいます。そして、従業員が持ってきた領収証を預かり、その額を支払う流れになります。

前述した通り健診は医療保険が使えませんので、検査項目の内容によっては費用が高額になってしまう可能性があります。健診を受ける機関の変更や指定を受けた際には、「費用の立て替えが必要であること」や、「高額の費用がかかってしまう可能性があること」を従業員に必ず伝えるようにしましょう。

5-2. 健康診断中の給与の扱いはどうなる?

健康診断を受けるのは、業務中の時間を割り当てることが多いかもしれません。このときの「給与」はどう扱うべきなのでしょうか。従業員から質問を受けることもあるでしょう。この点については、原則的に健診の種類によって変わってきます。

一般健康診断の場合、業務と直接関係があるわけではありません。あくまでも、従業員の健康を守るために行われている健診です。そのため、給与の支払い義務はありません。
しかし、実際には業務中の時間を割り当てることも多いため、支払ったほうが従業員もスムーズに受診することができます。そのため、義務はありませんが支払いの対象にするほうが望ましいと言えるでしょう。

一方、特殊健康診断は、業務と深く関係する健診です。「従業員が心身の健康を守りながら危険な業務に従事できているか」を調べるために行われるものでもあります。
そのため、特殊健康診断は業務を行うのに必要な行為であるとみなされ、受診中にも給与が発生するものと決められています。ですから、労働時間外に受診した場合には割増賃金が発生します。該当する場合には必ず覚えておきましょう。

5-3. 人間ドックやオプション検査を希望された場合の費用負担はどうすべき?

従業員の中には、『人間ドック』のような高額な検査や、健診の『オプション』について希望する人もいるかもしれません。この場合、企業や組織は、あくまで本来の健康診断にかかる費用分を支払うことになっています。
例えば、一般健康診断の定期健診を受ける従業員が『人間ドック』を希望したとします。この場合、企業が支払うのは定期健康診断にあたる検査料だけです。あとの費用は、従業員が負担すべきものなのです。

このように、高額な検査やオプションについては、従業員と企業・組織がそれぞれの分を支払う形をとるのが一般的といえます。ただし、例外もあります。それが、全国健康保険協会(協会けんぽ)の加入者向け健診です。

協会けんぽで行われている健康診断では、条件を満たした加入者は健診オプションをつけることができます。その費用の一部を、当該年度内に1回限り協会けんぽが負担してくれます。企業や組織が協会けんぽに加入している必要がありますが、条件を満たしていれば通常よりも安く健診オプションを利用することが可能になります。

5-4. 再検査が必要になる場合の費用負担は?

健康診断は、結果によっては『再検査』や『精密検査』が必要になる場合があります。しかし、それらの検査は健康診断の義務に該当しません。これは、「再検査や精密検査の対象となる基準値が医療機関や健診機関により異なるため」といった理由が挙げられます。

ただ、厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」によれば、企業は法定健康診断の結果によって二次検査の受診勧奨を行うことが適当であるとされています。義務には該当しないため罰則もないですし、再検査を受ける場合の費用負担も各企業の判断に委ねられてはいますが、「受診は勧めたほうがいい」ということです。

<参考>厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」

できるだけ再検査や精密検査の受診勧奨をし、その結果を報告してもらったり、保健指導を受けてもらったりすることが望ましいといえるでしょう。

6. まとめ

健康診断は企業や組織が行わなくてはならない義務のひとつであり、いかに企業や組織の健全な運営に欠かせないかがお分かりいただけたかと思います。一方で、費用だけでなく運営や業務遂行などが負担になってしまっている企業も多いことでしょう。

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