雇い入れ時健康診断とは?実施期間や対象となる従業員などを徹底解説

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雇い入れ時健康診断とは?実施期間や対象となる従業員などを徹底解説

雇い入れ時健康診断とは?実施期間や対象となる従業員などを徹底解説

「雇い入れ時の健康診断には、どのような決まりがあるのだろうか」「実施しなかったらどうなるんだろう」と気になる担当者もいらっしゃることでしょう。雇い入れ時の健康診断では、必要な項目や対象者をよく確認して、確実に法的な要件を満たさなければなりません。

法的な要件を満たさない健康診断を行ってしまうと労働基準監督署による指導や刑罰を受けることもあるため、注意が必要なのです。

本記事では、雇い入れ時の健康診断について重要な項目や注意点、対象者などについて詳しく解説していきます。

1. 「雇い入れ時健康診断」とは?把握すべき項目や対象者について

雇い入れ時の健康診断とは、「労働安全衛生規則」第43条に定められた実施義務のある雇い入れ時の健康診断のことを指します。

※参考:電子政府の総合窓口「労働安全衛生規則」

労働安全衛生規則とは、労働安全衛生法をさらに具体化したものです。ですから、労働安全衛生規則を破ると労働安全衛生法に違反したことにもなるのです。労働安全衛生法を違反すると、罰金刑や懲役刑という前科のつく刑事罰が与えられることになってしまいます。

雇い入れ時の健康診断を実施することは義務であり、実施しないことで場合によっては50万円以下の罰金刑に処せられる可能性がありますので注意が必要です。

では、その『雇い入れ時の健康診断』において、「検査項目」や「費用負担」、「実施場所」「実施時期」について、それぞれ解説していきましょう。

1-1. 検査項目は11個

厚生労働省は『雇い入れ時の健康診断』については、以下の項目を必ず満たす必要性があると告知しています。

  • 1. 既往歴及び業務歴の調査
  • 2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  • 4. 胸部エックス線検査
  • 5. 血圧の測定
  • 6. 貧血検査(赤血球数、血色素量)
  • 7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
  • 8. 血中脂質検査(LDL コレステロール、HDL コレステロール、血清トリグリセライド)
  • 9. 血糖検査
  • 10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  • 11. 心電図検査(安静時心電図検査)

※参考:厚生労働省≪栃木労働局≫「定期健康診断等について」(PDF)

健康診断を予約する際には、必ずこれら11個の要件を満たす健康診断の実施を医師に依頼するようにしましょう。

1-2. 雇い入れ時健康診断の対象者は?

健康診断の実施にあたっては、雇い入れ時の健康診断を実施する必要性のない従業員も存在します。ですから、雇い入れ時の健康診断の「対象者」を確定する必要があります。

雇い入れ時の健康診断を実施すべき対象は以下の通りです。

  • 正社員
  • パートや契約社員の中でも、契約更新により1年以上の雇用継続が見込まれる従業員
  • パートや契約社員の中でも、契約更新により1年以上すでに雇用実績がある従業員
  • 特定業務従事者(有機溶剤業務を行う従業員や深夜に仕事をする従業員)は6ヶ月以上雇用が見込まれる場合

上記の条件かつ1週間の労働時間として「正社員の4分の3以上」労働している従業員は、健康診断の対象者です。

正社員は解雇をすることが前提の雇用ではないため、実務上は試用期間であろうと全員受診させる義務があります。

一方でパートやアルバイト、契約社員のなかでも3ヶ月単位や半年単位の契約更新で「1年以上在籍するかどうか分からない」という場合は、雇い入れ時の健康診断は省略します。もし1年以上の在籍となった場合には改めて定期健康診断に参加してもらうようにしましょう。

ただし、所定労働時間の2分の1以上労働する従業員(正社員の労働時間が1ヶ月160時間なら月80時間以上労働のアルバイトも含まれる)は、雇い入れ時の健康診断を実施する“努力義務”があります。なお、派遣社員は自社の直接雇用ではないため、対象外となります。

1-3. 雇い入れ時の健康診断の“費用負担”は明文化されていない

雇い入れ時の健康診断における『費用負担』については、会社と従業員のどちらが費用負担をすべきか明文化された法律はありません。前述した「労働安全衛生規則」第43条に書かれているのは、健康診断を実施する義務のみです。

企業によっては「入社前の健康診断」に限っては従業員に負担をお願いしているところも存在します。ですので、雇い入れ時の健康診断の費用負担については、就業規則で誰が負担をするのか決めておくようにしましょう。

法律で明文化されていない以上、会社の就業規則が判断基準となってきます。

1-4. 入社前の健康診断をどこで行うべきなのかは決まっていない

費用負担と同様ですが、労働安全衛生規則第43条には病院の指定もないため、入社前の健康診断を「どこで行うのか」について決まりはありません。

入社予定の従業員が個人予約で病院を受診することも問題ありませんし、会社が指定した病院で健康診断を受けてもらうことも可能です。

また、入社予定日と会社が定期的に行う健康診断が偶然近くなった(3ヶ月以内)場合には、定期健康診断の項目を一部変更して雇い入れ時の健康診断に代えても問題ないとされています。

1-5. 雇い入れ時健康診断の「実施時期」はいつまで?

労働安全衛生規則第43条では「入社後3ヵ月以内に健康診断書の提出があった場合は、置き換えることが可能」としていますので、雇い入れ時の健康診断の実施時期は、「入社後3ヶ月以内」です。

一方で厚生労働省の通達(昭和23年1月16日基発第83号と昭和33年2月13日基発第90号)においては「入社の直前・直後」だという通達も出ています。

※参考:中央労働災害防止協会「健康診断結果にもとづく健康管理について」

法律をそのまま解釈するならば「遅くても3ヶ月以内」で良く、厚生労働省の通達を重視するならば「入社の直前・直後」だということになります。いずれにしても、他の業務に影響しないように入社3ヶ月以内に出来るだけ早く実施することが望ましいと言えるでしょう。

2. 雇い入れ時の健康診断を実施するうえでの5つの注意点

雇い入れ時の健康診断を実施するうえでの5つの注意点

続いて、雇い入れ時の健康診断で注意すべき点を5つ挙げて解説していきます。

注意点(1)入社予定の従業員の「労働時間」と「契約期間」の把握

採用決定の段階で、入社予定の従業員の「労働時間」と「契約期間」を把握するようにしましょう。入社段階で健康診断の要・不要を判断できなければ、その段取りが出来なくなってしまいます。

うっかり未受診のまま従業員を放置してしまうことにもなりかねません。必ず、内定を出した段階で健康診断の要・不要を判断しておくようにしましょう。

注意点(2)入社前の健康診断の費用は内定段階で確保しておく

入社前の健康診断の費用は、内定段階で確保しておくようにしましょう。費用を確保しておかなければ、経理に迷惑がかかってしまいます。

健康診断費用は印紙税の関係で処理に時間がかかることも多くあります。早めに連絡しておき、速やかに対応できるようにしておきましょう。

注意点(3)他の業務に影響が出ないように段取りを行う

健康診断業務は、病院の予約などを含め様々な業務が発生します。健康診断業務だけで半日分の業務時間がなくなるといったケースも起こりうるため、他の業務に影響が出ないよう段取りを行うようにしましょう。

たとえば「給与計算や重要な決済がある日には健康診断業務を入れない」といった時間配分だけでなく、日程の調整などにも気を配っておく必要があるでしょう。

注意点(4)運用次第では「就職差別」になってしまう可能性がある

採用前に雇い入れ時健康診断を実施し、業務における適性とは関係ない疾病を把握しようとする行為は、「就職差別」になってしまう可能性があります。

平成5年5月10日に労働省職業安定局からあった事務連絡『採用選考時の健康診断について』では、雇い入れ時健康診断は「応募者の採否のために実施するものではない」とされています。

※参考:労働省職業安定局「平成5年5月10日 採用選考時の健康診断について」(PDF)

一方で、この通達は憲法22条および29条を根拠とする「採用の自由」のための健康診断を禁止するわけではありません。これらはセンシティブな問題ではありますが、業務上の適性と紐づけて健康診断を行う、というのは避けるべきでしょう。

注意点(5)健康診断で異常が発見されたら指導を実施する

雇い入れ時の健康診断で異常が発見された場合には、労働安全衛生法第66条の7を根拠として、企業には医師または保健師による指導を実施するよう努める義務が発生します。

法律で定められた企業の義務ですので、速やかに指導を実施するようにしましょう。

3. 労働基準監督官が厳しくチェックするのは健康診断の未受診

労働基準監督官が厳しくチェックするのは健康診断の未受診

雇い入れ時の健康診断が未受診の状態を放置するのは、会社として良い状態とは言えません。仮に労働基準監督官が企業に監査に入ると、社員全員分の健康診断書を要求することがあるといいます。健康診断については、最も法令違反が簡単に確認しやすいからです。

労働基準監督署が監査に入ると、在籍している社員の氏名や年齢、雇用形態と健康診断の受診状況も細かくチェックします。ですから、産業医などの医師の承認印を必ず押してもらうといった「抜け漏れ」がないように保管しておくことも大切です。

普段から雇い入れ時の健康診断を正しく行っておくことで、行政指導を受けてしまうことなどを避けることができます。雇い入れ時の健康診断を受診させ忘れた、ということを防ぐために、担当者がとるべき対応のポイントとして以下の2点は押さえておきましょう。

3-1. 雇用期間と所定労働時間の確認

雇い入れ時の健康診断は、雇用形態や採用方式によって対象者が変わってくるというのは「1-2.雇い入れ時健康診断の対象者は?」で記述した通りです。

特に非正規雇用の従業員を迎え入れる際には、「雇用期間」と「所定労働時間」を確認して、雇い入れ時健康診断の対象となるのかどうかを見落とさないようにしましょう。

3-2. 検査項目の漏れがないかを確認

入社前3ヶ月以内の健康診断結果の提出を受ける場合は、前述したように法律によって定められた検査項目として11項目を満たしているか確認しましょう。

もし不足している項目があるようなら、追加で不足分の検査を実施してもらうよう促す必要があります。

4. 雇い入れ後の定期健康診断をスムーズに実施する方法

雇い入れ時の健康診断が終わったら、次は「定期健康診断」を実施する必要があります。定期健康診断は年に1回以上必ず実施する義務がありますが、入社時の健康診断を受診済の従業員については実施する必要がありません。

また、「特定の業務」に就く従業員に対しては健康診断の実施時期が異なってくるため、時期に注意して実施漏れがないようにしましょう。「特定の業務」とその時期の例としては下記の通りです。

  • 労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げられている業務(深夜業、有機溶剤等有害業務など)に従事する従業員

→6ヶ月以内ごとに1回の健康診断

  • 6ヶ月以上の海外赴任が決まっている従業員

→派遣の際と帰国後に復職する際に健康診断の実施

雇い入れ後も従業員が従事する職務等を踏まえたうえで、しっかりと健康診断を実施していきましょう。

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