タレントアクイジションとは?攻めの採用活動で優秀な人材を確保する方法を解説

タレントアクイジションとは、優秀な人材を“攻めの採用手法”で獲得することです。
少子高齢化で労働人口が減少するなか、企業間では人材を獲得するための競争が激化しています。これまでのように採用媒体に求人を載せて応募を待つだけでは優秀な人材の獲得が難しく、企業には採用活動の変革が求められています。
タレントアクイジションは、このような問題を解決する可能性があるとして注目を集めているのです。
そこで本記事では、タレントアクイジションの意味やメリット・デメリット、方法や成功させるポイントについて解説します。
「優秀な人材を獲得して、競争力を高めたい」とお考えの場合、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
1. タレントアクイジションとは、「攻め」の人材獲得法
タレントアクイジションとは、優秀な人材(タレント)を獲得する(アクイジション)手法です。タレントアクイジションでは、企業が中長期的な成長を目指し、転職潜在層の人材に対し積極的にアプローチします。
従来のリクルーティングでは、「転職したい」と考える顕在層に求人広告を出して応募を待つ「受け身」の手法ですが、タレントアクイジションは「攻め」の人材獲得法です。
通常の採用活動に加え、経営・人事戦略に基づいた企業のブランディングやメディア露出による潜在層への働きかけ、さらには採用後のオンボーディングなど、広範囲における業務が含まれる点が特徴です。
また、採用に至らなかった人材やアルムナイ(離職者)との関係も続け、必要に応じてアプローチすることもあるのです。
1-1. リクルーティングとの違い
従来のリクルーティングでは、特定のポジションに対し募集を出し、応募があった人の中から適切な人材を採用していました。
一方、タレントアクイジションでは、採用前の経営・人事戦略に基づいたブランディングや、採用後の人材が活躍できるようなサポートを含むため、リクルーティングと比べて長期的で包括的な取り組みです。
また、タレントアクイジションは、企業が持続的に成長できるよう人材戦略を立案し、企業のビジョンを実現できるような人材を獲得することが目的です。一方、リクルーティングは欠員補充など短期的な目標をベースに採用活動が行われることが多い点も、タレントアクイジションとの大きな違いといえるでしょう。
2. タレントアクイジションが日本でも求められている理由
タレントアクイジションはアメリカのIT企業を中心に始まりましたが、現在は日本でも注目を集めています。実際、人事部内に「タレントアクイジション部門」を設ける日本企業も増加しているほどです。
タレントアクイジションが求められる理由は、従来のリクルーティングだけでは優秀な人材獲得が困難になっているからです。特に、専門性の高いスキルを持つ人材や即戦力の人材は転職市場に現れにくく、採用が難しくなっています。
このような状況下で受け身の姿勢でいては人材を囲い込むことができず、競争力が低下する恐れがあります。そこで、企業の成長に貢献する人材獲得に向けてタレントアクイジションが日本でも重視されてきているのです。
3. タレントアクイジションのメリット

それでは、そんなタレントアクイジションのメリットについて3点を挙げて解説してみましょう。
メリット(1)優秀な人材を確保できる
タレントアクイジションは優秀な人材の獲得に焦点を当てているため、「求める人材」を確保できるのが大きなメリットです。
従来のリクルーティングのように、求人広告を出して可能な限り大きな母集団を形成しようとする採用方式とは異なり、タレントアクイジションは量よりも質を重視した採用方法です。
採用ブランディングやメディアへの露出によって、事業内容や今後のビジョンを発信することで、自社の基準に満たない人材はセルフスクリーニングされます。即戦力になるような優秀な人材のみが残り、求める高付加価値人材を採用しやすくなるのです。
メリット(2)新規事業の創出や事業拡大が期待できる
タレントアクイジションの目的は、新規事業の創出や事業拡大など、企業の持続的な成長をサポートする優秀な人材を獲得することです。
経営戦略に基づいた人事戦略を立て、狙いを定めて転職潜在層に働きかけることで、希望する人材を見つけやすくなります。
新規事業や事業拡大でどのようなスキルを有する人材が必要なのか、徹底的にターゲットを絞り込むことで目的が達成されやすくなるでしょう。
メリット(3)マッチング率が高い
タレントアクイジションは、企業と人材のマッチング率が高い点もメリットです。
タレントアクイジションでは、採用ブランディングを強化し、メディアやSNSで発信を続けて転職潜在層を惹きつけ、タレントネットワークを構築します。潜在層は発信内容に触れていくうちに「教育」され、企業への関心が増していくのです。
発信内容に業務内容や企業カルチャー、社員の働く様子などを含めておけば、入社後のミスマッチが起こりにくくなります。転職潜在層へのアプローチは時間がかかりますが、一方で人材の定着率は高まるでしょう。
4. タレントアクイジションのデメリット
それでは逆に、デメリットは何でしょうか。続いては、タレントアクイジションのデメリットについて3点ほど解説していきます。
デメリット(1)工数が増え、人事担当者の負担が増加する
タレントアクイジションは効果的な採用手法ですが、採用ブランドの構築や入社後のサポートなど、従来の採用活動よりも工数は増加してしまいます。人事担当者の負担も重くなるため、リソース不足に悩んでいる企業はなかなか踏み出せないかもしれません。
また、採用の質を高める必要がある点も注意が必要です。タレントアクイジションは量よりも質を重視しており、経営方針に沿った人材を見つけて採用しなければなりません。さらに、ブランドを構築したうえで潜在層を育てる戦略については、マーケティングの知識も必要になってきます。
タレントアクイジションは急に始められる手法ではないうえ、場合によっては人事担当者の負担が増える可能性がある、という点がデメリットといえるでしょう。
デメリット(2)社内にノウハウがなく、過去の参考事例も少ない
タレントアクイジションは歴史の浅い採用手法で、社内にノウハウがなく、参考にできる事例が少ない点もデメリットです。
人事担当者は手探りで推進することになり、成功の道筋を見つけるまでにどうしても手間がかかります。ただ、ノウハウがないというのは他社も同様で、自社の成功パターンを見つけると優秀な人材を囲い込めますが、PDCAを回しながら時間をかけて模索する必要があるのです。
デメリット(3)短期での採用は難しい
タレントアクイジションは短期での採用が難しい点もデメリットのひとつです。タレントアクイジションでは、転職市場には現れない潜在層に向けてアプローチするため、中長期的な戦略という位置づけなのです。
そのため、「欠員補充のためすぐ人材が欲しい」という場合には、これまでのリクルーティング手法に頼らざるを得ません。ですから、タレントアクイジションに限らず、人材が必要となるタイミングに応じて柔軟に採用手段を変えていくことが重要です。
5. タレントアクイジションの方法
それでは続いて、タレントアクイジションの一環として活用できる方法について、4点を挙げて解説していきます。
方法(1)ダイレクトソーシング:人材情報のデータベース活用
ダイレクトソーシングとは、人材情報のデータベースを活用し、希望する条件の人材を探し出す手法です。転職潜在層にダイレクトメッセージを送信し、応募に同意してくれるようコミュニケーションを取っていきます。
人材情報のデータベースは、自社にこれまで応募のあった人材を登録しプールさせておいたり、外部のデータベースを契約したりして活用します。保有するスキルや資格、キャリアや年収など、条件を絞ってピンポイントで検索できますので、優秀な人材を獲得しやすくなるでしょう。
方法(2)ソーシャルリクルーティング:SNSの活用
ソーシャルリクルーティングとは、SNSを活用した採用手法です。LinkedInやFacebook、Twitterなどを通して人材を見つけ、求職者にダイレクトメッセージを送信します。SNSを使って継続した情報発信をすると、働き方やオフィスの雰囲気などリアルな情報を伝えられるようになります。
ソーシャルリクルーティングでは、採用したい人材が関心のありそうなコンテンツを発信することがポイントです。まずはターゲットや競合他社を分析し、ペルソナ設計やコンテンツ企画に着手しましょう。企業のブランディングを損なわず、統一感のあるコンテンツを発信していくことが重要です。
そのうえでSNSからスカウトすると、自社に向いている人材を採用しやすくなり、ミスマッチが減少するでしょう。
方法(3)インターナルモビリティ:人事異動制度の活用
インターナルモビリティとは、企業内の人事異動制度のひとつです。「社内転職」とも呼ばれ、社員のスキルや経験、希望に応じて、企業内で人材配置を適正化します。
別の部署に異動するだけでなく、グループ会社の場合はグループ内の異動も含まれます。人材を適切に配置することで「人的資源を最大限に活かせる」として注目されている手法です。
優秀な人材は、社外だけでなく社内からも獲得できることを忘れないでおきましょう。
方法(4)リファラル採用:社員による紹介
リファラル採用は、社員が友人や知人を求職者として紹介する採用手法です。
自社について理解が深い社員から紹介されるので、企業風土に合った人材を獲得しやすいのが特徴です。また、転職サービスに登録していない潜在層を採用できますので、効率的にアプローチできる点もメリットといえます。
企業内にリファラル採用を浸透させるために、求職者を紹介した社員に対してインセンティブを提供する企業も多く見られます。求職者に声がけするハードルを低くするために「会食費用を支給する」というのも効果的でしょう。
6. タレントアクイジションを成功させるポイント
それでは続いて、タレントアクイジションを成功させるポイントを4点解説します。
ポイント(1)潜在層にアプローチする
タレントアクイジションを採用活動に導入する際は、潜在層にアプローチすることが重要です。理由として、潜在層は実際に転職活動をしている人数よりも多く、希望する優秀な人材が潜在層にいる可能性が高いからです。
アプローチする際は、マーケティング活動と同様に、求職者のジェネレーション(創出)とナーチャリング(育成)を意識します。まずはブランドの構築とメディア露出で潜在層の関心を引き、定期的に有益な情報を提供し『求職者』へと育成していく順番になります。
そして、スカウトメッセージを送ってコミュニケーションを重ね、応募まで導いていきます。
ポイント(2)採用ブランドを構築する
タレントアクイジションを成功させるには、採用ブランドの構築が欠かせません。求職者が「働いてみたい」と思うような魅力的なブランディングが必要です。
会社の現状だけでなく将来のビジョンを描き、求職者に向けてメッセージを発信することで、他社と差別化できるようになります。
SNSだけでなく、オウンドメディアを使って採用ブランドを構築するのもひとつの手段です。CEOからのメッセージや社員の働く様子をリアルに描くことで、求職者のリクルーティングにつながるでしょう。
ポイント(3)経営・事業戦略に基づいた人材獲得を目指す
タレントアクイジションは、経営や事業戦略に基づいて実践することが重要です。単に欠員を補充するために採用するのではなく、今後の経営方針に沿った人材を獲得する必要があるからです。
そのため、一貫性のある人事戦略と採用計画を立案し、どの事業にどのような人物が必要か検討を重ねて決定していきます。従来の採用計画に加え、全体的な人事予算の策定などにも関わる必要性が出てくるでしょう。
ポイント(4)社外パートナーに協力を求める
タレントアクイジションは従来の採用方法に比べ幅広い業務が含まれるため、採用担当者の役割が多角化しています。市場における自社のポジショニング分析や採用マーケティング、経営方針など、幅広い領域の理解を深めなければなりません。
通常の採用業務に加えてタレントアクイジションに取り組もうとすると、担当者の業務負荷が重くなってしまいます。そこで必要となるのが、社外パートナーです。
タレントアクイジションのノウハウがあるパートナーに協力してもらうことで、導入がスムーズになり勝ち筋を見つけやすくなります。自社のみで抱え込まず、必要に応じて社外パートナーに協力を求めてみても良いでしょう。
7. 優秀な人材獲得のご相談ならパーソルワークスデザインへ

タレントアクイジションは、これから優秀な人材を獲得するために必要な採用手法です。企業は攻めの姿勢で潜在層から候補者を見つけ、積極的にアプローチする必要があります。
パーソルワークスデザインは、「ダイレクトソーシング支援」をご提供しています。総合人材会社のパーソルグループに蓄積された豊富なノウハウのもと、効果的な採用手法の立案が可能です。
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