BCMとは?BCPとの違いや重要性、実施手順についてわかりやすく解説

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BCMとは?BCPとの違いや重要性、実施手順についてわかりやすく解説

BCMとは?BCPとの違いや重要性、実施手順についてわかりやすく解説

BCM(Business Continuity Management)とは、企業が緊急時でも事業を継続するためのマネジメント手法です。災害から事業を守るための事前対策だけでなく、万が一大きな被害にあった場合、どのように素早く復旧するかを考えるのがBCMです。

昨今では大型地震や洪水、パンデミックなどが起こり、国内外でBCMの必要性が高まっています。

そこで今回の記事では、BCMだけでなく関連性の高い『BCP』や、BCMの効果的な実施手順などについて解説します。最後には企業の導入事例もお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

1. BCM(事業継続マネジメント)とは?

BCMとはBusiness Continuity Managementの略称で、『事業継続マネジメント』と訳されます。企業が事業を持続的に行うために、BCP(事業継続計画)を策定し、運用や改善に取り組む包括的なマネジメントを指す言葉です。

災害時や感染症のまん延などで企業に被害が生じた際、企業や社会にとって不可欠な事業を継続し、たとえ中断した場合でも最短で復旧することがBCMの目的とされています。被害を最小限にするために、優先度の高い事業を抽出してリスクを分析し、被害拡大を防止する対策をあらかじめ企業全体に浸透させておきます。

1-1. BCP(事業継続計画)との違い

企業がBCMを実施する際にあわせて取り組みたいのが、『BCPの策定』です。BCPとはBusiness Continuity Planの略称で、『事業継続計画』と呼ばれています。BCPは事業を継続するための計画で、BCMの一環として策定が必要になります。

大規模な地震や水害、感染症などの脅威があった際、部門または業務ごとにどのように対応すればいいかを取り決め、『BCP』としてまとめます。具体的には、従業員や家族の安否を確認するITツールの使用方法、事業の復旧対応、二次被害を防止する対策などを計画しておきます。

昨今、地震や台風による水害といった「事業継続に影響を及ぼす事象」が多様化しているため、あらゆるケースを想定したBCPの策定が重要です。

1-2. BCMS(事業継続マネジメントシステム)との違い

BCMSとはBusiness Continuity Management Systemの略称で、「事業継続マネジメントシステム」と呼ばれています。BCMSは、事業継続を確立して運用、改善するマネジメントシステムです。

BCMSには、「方針」「BCPの策定」「内部監査」「レビュー」「組織化」などが含まれます。継続的にBCMを実施するには、BCMSによる仕組みづくりが欠かせません。後述するISO22301はBCMSに関する国際規格で、緊急時に事業継続を目指す規格として注目されています。

2. BCMやBCPが重要な理由

ここまでBCMの概要について説明してきましたが、そもそもBCMがなぜ必要になってくるのでしょうか。BCMやBCPが重要な理由について、3点を挙げて解説してみましょう。

理由(1)災害があると事業継続が困難になってしまう

地震や洪水といった自然災害が原因でシステム障害が発生すると、事業継続が困難になるリスクが高まります。災害の影響で売上やシェアを確保できない状態が続くと、たとえシステムが復旧しても災害前と同じような経営環境に戻らなくなることも多いのです。

実際、東日本大震災の発生時、BCPの発動や現場対応が遅れたため、事業継続が叶わなかった企業が見られました。震災以降、BCMやBCPの策定が強く求められるようになり、重要な経営課題となったのです。

また、たとえ倒産は逃れたとしても、対応が遅くなれば企業ブランドの低下や風評被害が起こるリスクもあります。したがって、事業主はBCMを経営に関わる重要事項と捉え、徹底した現場教育やコミュニケーション手段の確立などを含めた詳細なBCPの策定が必要なのです。

理由(2)国内外で導入が進み、重要視されつつある

BCMの実施が重要視されているのは日本だけではありません。BCMは国外でも導入されており、ガイドライン化が促進されています。BCMにはさまざまな定義がありますが、ここでは特に評価の高い「ISO22301」および「BS25999」という規格について説明します。

ISO22301とは、BCMSつまり事業継続マネジメントシステムに関する国際規格です。PDCAサイクルを用いて継続的に改善を図り、「演習の実施」や「平時・有事における要求事項」が明文化されているのが特徴です。

次に、BS25999とはBCMSに関するイギリスの規格です。BS25999は二部構成で、前半には事業継続管理のための実践規範が、後半には事業継続管理の仕様が含まれます。BCMの定義やフレームワーク、実践方法、モニタリングなど包括的な内容で構成されています。

このようにBCMがさまざまなガイドラインで定義づけられていることからも、BCMの実施が企業にとって不可欠な“世界的な潮流”であることがわかるはずです。ですから、対策が不十分である企業にとってBCMの実施は喫緊の課題と言えるでしょう。

理由(3)取引先から信頼を獲得できる

BCMの重要性は社会的に認知されてきているため、BCMの実施をアピールすることで取引先から信頼を得やすくなります。また、緊急時にBCP通りに素早く対応し復旧できれば、企業のブランド力の向上にもつながるでしょう。

取引先によっては、BCMに関する認証取得や取り組み実績を選定基準として設定しているケースもあります。さらに、「BCM格付融資」のように、危機的状況でも事業継続が見込める企業へ融資する、といった制度を設ける銀行もあります。

取引先や銀行がBCMを重要視する傾向は今後ますます強くなると考えられますので、企業には素早い対応が求められるでしょう。

3. BCMの効果的な実施手順

BCMの効果的な構築手順

では、実際にどのような手順でBCMを実施すれば良いのでしょうか?ここでは、以下の6つの手順について解説していきます。

  • 手順1:基本方針を策定する
  • 手順2:インパクト分析を行う
  • 手順3:対策を検討する
  • 手順4:計画を策定する
  • 手順5:社内周知する
  • 手順6:課題を改善する

手順1:基本方針を策定する

まずは基本方針を策定します。
基本方針は企業の特性に合わせて検討しましょう。企業の社会的役割や地域との関係性も考慮し、「優先して守るべき事業対象」を抽出します。何を優先的に取り組むべきか分析することで、そのための対策を検討できるようになります。

基本方針の例として、次のような項目が考えられるでしょう。

<基本方針の例>

  • 人命優先
  • 重要な事業継続
  • 二次被害の防止
  • 地域の復興への貢献

手順2:インパクト分析を行う

次に、インパクト分析で緊急時の事業リスクを検討します。具体的には、地震や洪水、感染症の感染拡大などによる「被害規模」「影響を受ける業務」「従業員や取引先への影響」などを抽出していきます。インパクト分析を実施することで、優先して復旧を目指す業務や対策を想定することができます。

手順3:対策を検討する

インパクト分析後は、BCPの基礎となるリスク対策を検討します。想定被害や事業への影響から「どのような対策が必要なのか」を考えることが重要です。具体的には、次のような対策があげられるでしょう。

  • 緊急時の経営資源を確保するための分散管理
  • 電力やガス、通信、水などライフラインのバックアップ機能設置
  • 設備状況を一元管理できるモニタリング体制の構築
  • スタッフの安否確認システムの活用

手順4:計画を策定する

手順3で対策の土台が決まったら、詳細な計画をBCPとして落とし込みます。緊急事態が発生した際の早期復旧を目指した対策だけでなく、被害を最小限に抑えるための事前対策も含めた策定が重要になるでしょう。BCPとしては、次のような計画が考えられます。

  • 緊急時の通信手段
  • 備蓄品の配備や供給方法
  • スタッフの訓練計画
  • 行政や自治体、地域との協力体制

手順5:社内に周知する

BCP策定後はマニュアル化し、社内に周知する必要があります。スタッフへBCPの重要性を定期的に啓蒙し、訓練や事前対策を実施しましょう。計画やマニュアルを読むだけでは、実際の緊急時にアクションに起こせない恐れがあります。緊急事態を想定した行動や知識を身につけられるよう、周知を徹底して行いましょう。

手順6:課題を改善する

BCMやBCPの策定後は定期的に課題がないか確認し、改善を行います。年次確認のほかにも、社内外で大きな環境変化が起こった場合や、BCPの発動後に反省点を洗い出すことも重要です。BCMは事業継続に欠かせないため、迅速な課題解決は企業の優先事項だと言えるでしょう。

4. BCMを実施する際のポイント

それでは続いて、BCMを実施する際のポイントとして3点を挙げながら解説しましょう。

ポイント(1)企業存続に関わるタスクを最優先にする

BCMを実施する際、企業存続に影響のある事業やタスクを優先的に考慮することが大切です。その理由は、BCM自体が「事業継続」を目的としているからです。優先すべきタスクは企業によって異なりますが、緊急時に「企業の財務状況」や「ブランドイメージ」に大きな影響を与える事業の復旧をまず考える必要があるでしょう。

ポイント(2)経営陣が率先して推進する

BCMは重要な経営判断に関係するため、経営陣が率先して社内周知を実施することが大切です。災害時は組織全体で動かなければ窮地を脱することが難しいケースもありますので、経営陣がリーダーシップをとり普段から社内周知を徹底する必要があります。そうすることで、スタッフからもBCMに対しての協力が得られやすくなるでしょう。

ポイント(3)BCMの実施自体が目的とならないようにする

BCMの実施が社会的に求められているからといって、実施自体が目的となってはいけません。緊急時の対策をマニュアル化するのはもちろん重要ですが、いざというときに役に立たなければ十分ではありません。緊急時を想定して、実際に行動できるような意識づくりや体制を整備する必要があります。

ですから、BCP策定時には現場の意見を取り入れ、「本当に実行可能か」という視点を常に忘れないようにしましょう。

5. BCMの導入事例

それでは、実際にBCMを導入した企業の事例を3件ほど挙げながら簡単に解説してみましょう。

事例(1)キヤノンマーケティングジャパン株式会社

キヤノンマーケティングジャパングループでは、災害や新型インフルエンザのまん延時に備え、BCMを実施しています。具体的には首都直下地震対応BCPや被害状況確認ツールなどをされています。

※参考:事業継続|キヤノンマーケティングジャパン株式会社

事例(2)株式会社ウェザーニューズ

株式会社ウェザーニューズでは、緊急時にもリアルタイムで正確な情報を配信できるようBCPを策定。被害が生じた場合のリスクを想定して詳細に計画を立て、不測の事態に備えているようです。

※参考:「いざという時、人の役に立つ」ために。オールハザードBCPで不測の事態に備える|ニュートン・コンサルティング

事例(3)福西電機株式会社

電気機器販売商社の福西電機株式会社では、南海トラフ地震と首都直下地震に備えBCPを策定。初動対応のための年次訓練を実施し、継続して改善しています。

※参考:~あらゆる事業リスクに備えて、競争の「一歩先」をめざす~福西電機株式会社|NTTLS

6. パーソルワークスデザインはBCP対策をサポートします

パーソルワークスデザインはBCP対策をサポートします

自然災害の多い日本で今後も事業を継続するには、BCMの実施やBCPの構築が欠かせません。事業リスクやインパクトを分析し、優先度の高い事業から対策を立てていくことが重要です。

パーソルワークスデザインでは、企業のBCP対策において重要な役割を担う「ヘルプデスク/コールセンター」の運営を支援する、さまざまなサービスを提供しています。

例えば、昨今は新型コロナウイルスの影響により対面での顧客対応が難しく、コールセンターへの問い合わせが増加傾向にありますが、当社サービスをご利用いただくことで問い合わせ業務の負担を軽減させることが可能です。また、在宅勤務に伴い増加する従業員からの問い合わせについても、当社からの遠隔サポートにより業務を効率化できます。

ほかにも、専業として培ってきたノウハウとホスピタリティ、ITILやHDIなど国際スタンダードのサービスメソッドを基盤とした、さまざまなヘルプデスク/コールセンターサービスを提供しています。また物理的な拠点も複数ありますので、BCP対策としても効果的です。

BCP対策によるリスクマネジメントをご検討の際には、ぜひお気軽にパーソルワークスデザインまでご相談ください。

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