リスキリングとは? DX時代の人材育成において重要なポイントとおすすめの資格について解説

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リスキリングとは? DX時代の人材育成において重要なポイントとおすすめの資格について解説

リスキリングとは? DX時代の人材育成において重要なポイントとおすすめの資格について解説

技術の進歩による社会の変化や、感染症をきっかけとする社会の変化など、様々な外部環境の変化にさらされる昨今、個人が業務上で求められるスキルも大きく変わりつつあります。そのような変化に対応するために、国内のみならず世界全体でも注目されているのが、改めてスキルを習得しなおす『リスキリング』です。

本記事では、その『リスキリング』について他の“社会人の学習”とも比較をします。そのうえで、位置づけや意義を明確にして、企業がリスキリングを導入するメリットや注意点についても実例を挙げながら深掘りしていきます。さらには、リスキリングにおすすめの資格についてもご紹介していきます。

リスキリングについて具体的な知見を高めたい方や、自社でリスキリングの導入を検討されている方にとっては参考となる情報が網羅されていますので、ぜひご一読ください。

目次

1. リスキリングとは?

リスキリングとは、社会人が業務を行ううえで必要な技術や知識などの“学びなおし”を、業務と並行しながら行っていくことです。これは、現在取り組んでいる業務の拡大だけでなく、新しい業務への取り組みのケースも含みます。また、個人が自主的に取り組むよりも、企業が自社の社員のスキルアップを目的としてプログラムを提供する、というケースが一般的と言えるでしょう。

DX (デジタルトランスフォーメーション)戦略が推進される近年においては、『ビッグデータ分析』や『AI』の知識について“業務で活用するために技術を習得する”、という意味合いで『リスキリング』という言葉が使われることも多くなっています。

リスキリングとは目的や学び方などの点で違いはありますが、同じ「社会人の学習」としては以下のようなキーワードも挙げられます。

1-1. リカレント教育

リカレント教育は、社会人が新たなスキルや知識の取得を目的として、退職ないしは休職して仕事から離れ、大学等に通って学びに専念することを指します。キャリアアップのための学習という点でリスキリングと目的は近いですが、リカレント教育では就労と学習を交互に行うのが原則なのに対し、リスキリングは業務と並行して学ぶのが基本になっています。

1-2. OJT

OJT(On the Job Training)は、上司や先輩社員の指導を受けながら実務を通してスキルを高めていくことを指します。業務と学びが同時に行われ、業務に必要なスキルを身につけていく点ではリスキリングと近いですが、OJTの目的は「現在の業務に必要なスキルの取得」です。新たな業務を見据えたスキル取得を行うリスキリングとは、学習の目的や範囲に少しだけ違いがあると言えます。

1-3. アップスキリング

アップスキリングは、現在の業務でのスキルアップやキャリアアップを前提とした学習を指します。キャリア形成のための学習である点はリスキリングと同様ですが、あくまで“現在求められるスキルを「Up(アップ)」すること”が目的です。業務の拡大や転換まで想定に入れた「Re(リ)」スキリングとは、やや目的や学習範囲が異なります。

1-4. 生涯学習

生涯学習は、在職中や退職後を問わず、生涯を通じて行われるあらゆる学習のことを指します。学習の範囲としては、業務に関連することから自己啓発や趣味まで、「学び」に該当するあらゆる分野が対象です。

2. リスキリングの学習対象の具体例

前述したように、リスキリングの学習対象範囲は「業務の拡大や転換に必要なスキル」全般を指します。具体的な指標はありませんので、非常に広範囲と言えるでしょう。ただ、昨今ではIT分野やDX分野でのスキルが特に注目されています。

学習対象となる具体例をみてみましょう。

【学習対象の具体例】

語学 / マーケティング / プログラミング / データサイエンス / 情報セキュリティ / AI、機械学習

このように多岐にわたる選択肢のなかから、自社にとって必要な領域を見極めたうえで「社員に取得してもらうスキル」の選定を行っていくことが重要です。

3. リスキリングに注目が集まっている背景

リスキリングに注目が集まっている背景

それでは、改めてリスキリングに注目が集まっている背景について見ていきましょう。

背景(1)国際的なテーマになっているから

リスキリングは、国内のみならず世界的に注目されているキーワードです。

政治・経済・環境など各分野のリーダー・専門家が集まる国際会議の『ダボス会議』が2020年に開催されましたが、そのなかでも「2030年までに10億人により良い教育、スキル、仕事を提供する」ことを目標とする、その名も『リスキリング革命』が打ち出されました。

このように、世界的に見ても「変化に対応できる人材の確保」は課題となっているのです。

背景(2)コロナ禍での業務形態の転換

コロナ禍を機に、リモートワークなどオンラインでの業務が増え、これまでとは業務形態が大きく変化しています。柔軟な働きかたが可能になる反面、社内では非効率だった業務が浮き彫りになるなど、課題が可視化されていきました。

そのような状況下で、「新たなワークスタイルへ適用する必要がある」とか、「非効率な業務に従事していた社員のリソースを再活用するため」といったニーズから、リスキリングの重要性が高まっています。

背景(3)変革を担う人材が不足している

「DX」が推進されている近年において、多くの企業ではITを活用した『DX戦略』を進められる「専門性を持った人材の確保」に課題を感じています。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の『DX白書2021』によると、日本企業の多くが、事業戦略上の変革を担う人材の「量」と「質」の確保について、「大幅に不足している」「やや不足している」と感じているようです。そういった背景からも、リスキリングが注目されているのです。

※参考:独立行政法人情報処理推進機構『DX白書2021』(PDF)

背景(4)政府による国を挙げた支援

様々な事情から急務となっている『DX人材の育成』は世界中で課題となっていますが、日本においては先進国のなかでも特に取り組みへの遅れが目立っているのが現状です。

そのような状況のなか、2022年10月に岸田首相は「構造的な賃上げ達成」を実現させるため、「デジタル・グリーンなどの注力分野へのリスキリングに5年間で1兆円を投入し、制度の創設や企業への補助金施策を行う」という意向を表明しました。

これにより、国内でのリスキリングに対する注目度はさらに高まった形になりました。

4. 企業がリスキリングに取り組む4つのメリット

それでは続いて、企業がリスキリングに取り組むメリットについて4つを挙げながら解説していきましょう。

メリット(1)業務効率・生産性の向上

従業員をリスキリングしてIT技術に精通してもらうことで、従来は手作業で行っていたような業務をIT活用によって自動化できる可能性が生まれます。IT活用によって生産性が向上したり、自動化によって業務が効率化できたり、といったメリットがあるわけです。

また、IT化によって削減できた時間や余剰人員を他の業務に回すことで、さらなる生産性の向上を目指すこともできるはずです。

メリット(2)従業員満足度の向上

1つ目のメリットで挙げた「生産性の向上」が業績に反映されれば、労働時間を短縮しながら賃金を上げることになるなど、待遇の改善も可能になるかもしれません。会社が提供したプログラムによって新たなスキルが身につき、待遇もよくなるという好循環が起きれば、従業員満足度の向上も期待できるでしょう。

また、別の角度からも従業員満足度の向上は考えられます。リスキリングを通したスキルアップによって、新しい視点を得られるとか、視野が広がるといったことにもなるでしょう。単に日々の業務をこなすだけではなく、学びを続けることによって仕事へのモチベーションアップも期待できるのです。

メリット(3)イノベーションの創出

リスキリングによって従業員が新しいスキルを身につけることにより、視野が広がるのは前述した通りです。従業員の視野が広がると、これまでにはなかったような革新的なアイデアが生まれてくる可能性があります。

もちろん、そういったアイデアをしっかりと拾って形にしてあげるような社内体制は必要ですが、リスキリングによって新規事業や事業拡大へ向けた一歩が踏み出せるきっかけを作れるかもしれません。

メリット(4)採用・教育コストの削減

社内でスキルの高い人材をリスキリングすることで、採用や教育のコストを削減できることにもなります。これはどういうことかと言うと、社内でDXスキルの高い人材を増やすためには、外部からスキルの高い人材を採用する方法も考えられるでしょう。しかし、新たな人材を採用する場合には、当然ながら採用コストが発生するうえ、一定の社内教育も必要になります。

また、仮に前職で活躍していたとしても、自社においてその能力が適切に発揮されるかどうかは分からないというリスクもあります。リスキリングによってそういったリスクを避けながら、採用コストや教育コストも削減することができるのです。

5. リスキリングを導入するためのステップ

リスキリングを導入するためのステップ

それではいよいよ、リスキリングの導入ステップを見ていきましょう。効果的に導入するためのステップ例を順にご紹介します。

ステップ(1)取得させたいスキルを選定する

最も重要な意思決定と言っても過言ではないのが、リスキリングを行う対象スキルの選定です。

今後の社会の変化やワークスタイルの変化を予測し、そのなかで自社がどう変革していくべきなのか。そのために社員に求める能力は何なのか。そういったことを熟考したうえで、対象とするスキルを選定していきます。

ステップ(2)教育対象となる部署・社員を選定する

全社員向けにリスキリングを実施する場合は別ですが、対象者を部署単位や個人単位などで絞る場合には、その選定も非常に重要になります。

求められるスキルと本人との適性や、本人の意向なども考慮しながらリスキリングの対象者を決定していきます。

ステップ(3)教育プログラムを企画・実施する

教育するスキルと対象者が決定したら、実際に教育のプログラムを企画・実施し、対象者に学習を進めてもらいます。プログラムの実施の際には、スキル取得のための専門機関など、外部組織の力を活用するのも効率的でしょう。

ステップ(4)現場での実践

一通りのプログラムを終えたら、実際の現場で実験的にでも「実践できる場」を用意します。

取得したスキルが実務のなかで活かされることにより、そのスキルを自分のものにできますし、社員自身も成長を実感することができるはずです。

ステップ(5)効果検証・アフターフォロー

取得したスキルが現場で活用されるようになった後は、実際にそのスキル取得による業務効率・生産性の向上について、かかったコストとの差し引きも判断したうえで評価します。そして、今後のリスキリング教育の継続の可否や改善ポイントの洗い出しを行っていきます。

また、教育を行った社員に対するフィードバックや、必要に応じた追加プログラムの検討なども場合によっては有効でしょう。

6. リスキリングに取り組む際の5つの注意点

導入するメリットと導入する流れをお伝えしましたが、一方でリスキリングに取り組む際の注意点もあります。ここでは5つを挙げて解説していきましょう。

注意点(1)自社にあった内容を選択できるよう分析する

リスキリングという言葉が注目されはじめたことで、世の中にはリスキリングのコンテンツが増えつつある状況です。しかし、やみくもにリスキリングに手を出したところで、自社にとってプラスにならなければ意味がありません。

数多あるコンテンツのなかから、「自社にはどういったリスキリングが向いているのか」を選択できるように、あらかじめ自社の現状や問題点をしっかりと分析しておく必要があります。

注意点(2)学習の目的を共有する

よほどスキル取得に前向きな社員でない限り、「目的の共有」なく新たな学習に能動的に取り組むことは難しいでしょう。

「なぜスキルを取得してもらうのか」「スキル取得の結果、どのようなメリットがあるのか」など目的を明確に共有して、学習に前向きになってもらうことが重要です。

注意点(3)取り組みやすい体制や社内風土を整える

長期的にリスキリングに取り組んでいくためには、取り組みやすい体制や社内風土を整えていく必要があります。そのためには、従業員はもちろんのこと、管理職や役員にもリスキリングの意義や必要性をしっかり理解してもらうことが重要です。

社内には「学ぶことなんかより、仕事のほうが大事だ」という考えの人間も一定数いることを考慮しつつ、「リスキリングによって、会社や従業員にとってどんな良いことがあるのか?」という点をなるべく具体的に周知していきながら、体制を整えていきましょう。

注意点(4)学習が負担にならないよう配慮する

従業員に学習する気持ちがあったとしても、就業後や休日に学習をしてもらうのは大きな負担になってしまいかねません。負担になるものは、なかなか続かなくなってしまうものです。

空き時間でも取り組みやすいように何らかの工夫をするとか、業務のなかで学習時間を設けてもらえるようにする、などの配慮が必要です。

注意点(5)中長期的に継続できるように仕組みを用意する

4つ目にも近い話ですが、どんなに良いリスキリングのコンテンツを利用したとしても、1回で終わってしまっては効果が期待できません。中長期的に学び続けることが、自社へのメリットに繋がると言えるでしょう。

そのためには、実際にリスキリングで学ぶ従業員たちのモチベーションを維持する仕組みが必要です。リスキリングの対象となる従業員のモチベーションを維持し、意欲的に学習に取り組んでもらうために、例えば以下のような仕組み作りをしてみるのも良いかもしれません。

  • 従業員の意志を尊重し、学びたいタイミングで学びたい内容を学べるような仕組みを作る。
  • サークルなど、一緒に学ぶ仲間づくりができる仕組みを提供する。
  • 効果的なリスキリングを行った従業員を表彰するなど、インセンティブを用意する。

7. 企業での実際のリスキリングの導入事例

それでは、実際の企業で取り組まれている国内外のリスキリング事例について簡単にご紹介してみましょう。

海外事例(1)AT&T

米国の通信大手AT&T社は、2010年代前半にいち早く社員のリスキリングに取り組み「米国企業史上、最も野心的」と評価されています。2008年に行った社内調査で、社内の4割にあたる従業員が「今後、消滅していく分野に専門的に従事している」ことを課題と捉えた同社は、全社的なリスキリング施策を導入しました。

具体的には、「これから先、社内で重要となるスキル」について『オンライン教材』や『学習プラットフォーム』を提供しました。それと同時に、業務ごとに求められるスキルの明確化や、スキル保有者を優遇する報酬体系を設定したのです。さらに、自発的にスキル取得を行うメリットを提示することで、社内の人材開発を成功させていきました。

海外事例(2)Amazon

同じく米国の通販大手Amazonでは「Amazon Technical Academy」と呼ばれる、非技術者を技術職に転換するリスキリングが用意されています。また、すでに一定のスキルを持つ技術者に機械学習のスキル教育を施す「Machine Learning University」なども用意されており、社内全体で『DX人材』を強化すべく、スキルの底上げを行っているようです。

国内事例(1)ヤマト運輸

物流大手のヤマト運輸では、2021年に『ヤマトデジタルアカデミー』を設立しました。このアカデミーでは、対象社員に約2か月間「プログラミング」や「データサイエンス」のリスキリング教育を施しています。

親会社のヤマトホールディングスが2020年に打ち出した長期経営計画「NEXT100」のなかで、『データ・ドリブン経営への転換』が挙げられています。そのプランを実現するため、従来はエクセルでアナログな管理をしていた「配送状況」を、データで管理していく実務などにもリスキリングが活かされているようです。

国内事例(2)日産自動車

「自動運転」など、従来の開発とは異なる分野への対応を求められる自動車業界。その自動車企業の大手である日産自動車では、対象者としてソフトウェアに知見の高い社員を中心に選び、自動車開発のためのソフトウェア教育を4か月間集中して行っていると言います。

元々は自動車メーカーのなかではソフトウェア分野は中心ではありませんでした。しかし、自動車の『ありかた』そのものが転換されている昨今において、まさに市場の変化に対応するためのリスキリングを行っている象徴的な事例と言えるでしょう。

8. リスキリングにおすすめの資格『ICDL』ならパーソルワークスデザインへ

リスキリングにおすすめの資格として『ICDL』があります。

ICDLは国際的なIT資格であり、世界的に広く認知されている“ICDL規格”に基づいた認定試験によって、コンピュータやデジタルツールを活用する能力を評価・認定しています。

わたしたちパーソルワークスデザインは、ICDLの公認認定・テスト機関として指定されています。資格の取得に向けた認定プログラムの受講や、試験の受験についてお手伝いをさせていただきます。

詳細については下記のページをご覧くださいませ。
世界標準のデジタルスキル認定試験『ICDL』

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