電子帳簿保存法によって紙の請求書はどうなる?保存方法や注意点を紹介!

日本では1998年7月に「電子帳簿保存法」が施行されています。これは国税関係の帳簿や書類を電子データとして保存することを定めた法律で、施行後も改正を重ねています。
こうした中、請求書をはじめとするさまざまな書類を電子データとして保存することが、2024年1月より義務付けられました。
「紙の請求書を受領もしくは発行した場合、どのような対応を行えば良いのだろう」と疑問に思う担当者も多いはずです。
そこで本記事では、電子帳簿保存法の基礎知識や請求書を受け取った場合の対処方法・請求書を電子データで保存する際の注意点などについて解説します。
目次
1. 電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿や書類を電子データとして保存することを定めた法律です。1998年7月に施行されて以来、時代の変化に応じて改正を重ねてきており、直近では、2022年1月に改正されています。
以前の電子帳簿保存法と比較して、大きく変更された点は以下の通りです。
変更点 | 改正前 | 改正後 |
事前承認制度 | 国税関係帳簿の書類を電子データ保存、もしくはスキャナ保存するためには、税務署への事前申請・承認が必要 | 税務署への事前申請・承認が不要 |
検索機能要件 | 帳簿書類の電子データや電子取引記録については、複数項目を掛け合わせて複雑な検索機能が必須 | 検索要件は「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つのみ |
タイムスタンプ要件 | スキャナ保存時のタイムスタンプの付与期間は受領してから3営業日以内 | タイムスタンプの付与期限は最長約2ヶ月と概ね7営業日以内となり、訂正や削除履歴が残ったり訂正や削除ができなかったりするクラウドサービスを利用する場合には、省略することも可能 |
ペナルティ | 電子取引データ保存やスキャナ保存の際に隠ぺいや偽装などがあった場合には、35%の重加算税が発生 | 電子取引データ保存やスキャナ保存の際に隠ぺいや偽装などがあった場合には、35%+10%の重加算税が発生 |
適正事務処理 | 帳簿書類のスキャナ保存は、タイムスタンプが付与されてから記録事項をチェックして、原本とスキャンデータを確認 | 適正事務処理そのものが廃止 |
電子取引による電子データ保存 | 電子データとして受け取った場合、紙に印刷して保存することが可能 | 電子データとして受け取った場合、電子データのまま保存することが義務化 |
こうして比較すると、多くの項目が緩和されたことが分かります。では、なぜこうした変化が生じたのでしょうか?それには、「2025年の崖」問題を前に、多くの企業でDX推進が求められていることが要因として挙げられます。
「2025年の崖」問題とは「DX レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」で取り上げられた内容であり、企業がDXを推進しなかった場合、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が発生するという深刻な問題のことです。
「2025年の崖」問題の影響もあり、多くの企業でDXの推進が急がれるため、今回の改正によって電子取引データ保存やスキャナ保存の際に隠ぺいや偽装などがあった場合、ペナルティが厳しくなっています。
また、納品書や請求書などを電子データとして受け取った際には、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが義務付けられています。
電子帳簿保存法では、電子保存の形式が「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3種類に分かれています。それぞれの意味や対象となる書類は以下の通りです。
・電子帳簿等保存:電子的に作成した帳簿や書類をそのまま電子データとして保存すること
国税関係帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳・売掛帳・買掛帳・現金出納帳・売上台帳・固定資産台帳など |
決算関係書類 | 貸借対照表・損益計算書・棚卸表など |
取引関係書類 | 注文書・見積書・契約書・領収書・請求書・納品書など |
・スキャナ保存:紙の書類をスマートフォンやスキャナなどで読み取って保存すること
取引関係書類 | 注文書・見積書・契約書・領収書・請求書・納品書など |
・電子取引:電子メールやクラウドサービスなど、電子データとしてやりとりした情報をそのまま保存すること
電子書類 | 注文書・見積書・契約書・領収書・請求書・納品書など |
2. 請求書とは?保存期間や記載項目について
請求書とは、仕事の報酬やサービスを利用した際に発生した料金を期日までに支払ってもらうための書類です。
請求書の発行は義務付けられているわけではありません。しかし、請求書を発行することで取引を行ったという証明ができます。
未然にトラブルを防ぐことにもつながるため、多くの企業は請求書を発行しています。請求書に記載する項目は以下の通りです。
- 請求書を発行する自社の情報
- 取引を行った日付
- 取引内容
- 取引金額(小計・消費税・合計)
- 請求書を発行する取引先の情報
請求書には保存期間が設けられており、一般的には個人事業主が5年、法人は7年です。紙も電子データも、同じルールが適用されます。
なお、個人事業主であっても年間の売り上げが1,000万円を超えている場合には消費税課税事業者となるので、保存期間は7年となります。また、法人で欠損金の繰越控除を適用している場合には10年となりますので、注意しましょう。
3. 取引先から請求書を受け取るパターンは2つ

取引先から請求書を受け取った場合、紙のパターンと電子データのパターンがあります。それぞれの対応方法について解説します。
パターン(1)紙の請求書を受け取った場合の対応方法
紙の請求書を受け取った場合には、以下2つの対応方法があります。
- 紙のまま保存する
- コピー機やスマートフォンでスキャンしてから電子データとして保存する
紙のまま保存する方法は、会計処理が終了したら書類をファイリングして保管します。多くの企業が日頃から実践しているはずです。
一方のコピー機やスマートフォンでスキャンしてから電子データとして保存する方法は、読み込んだ後にデータをシステム上にアップロードして保管します。
日頃から馴染みのある機器を用いて行うため、ハードルが低く、すぐにでも実行できます。電子データ化しやすくするために、専用のシステムを導入している企業も少なくありません。
※電子データ化について詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください
スキャニングのやり方とは?書類をスキャンしデータ化する方法について徹底解説
パターン(2)電子データの請求書を受け取った場合の対応方法
電子データの請求書を受け取った場合には、紙のときと同様に以下2つの対応方法があります。
- 電子データのまま保存する
- 電子データから紙に出力して保存する
電子データのまま保存する方法では、受け取った請求書をシステム上にアップロードして保管します。
一方の電子データから紙に出力して保存する方法は、電子データをコピー機で印刷した後にファイリングして保管します。しかし、電子帳簿保存法が改正されたので、この対応ができるのは2023年12月までです。
2024年1月からは電子データを紙に出力して保存することはできないので、注意しましょう。
4. 自社で請求書を発行した際の控えの保存方法
自社で請求書を発行した際には、控えを保存しなければいけません。控えの保存方法は、請求書を受け取ったときと同様に、もしくは電子データの2つのパターンがあります。
4-1. 紙で発行した場合
- 紙のまま保存する
- コピー機やスマートフォンでスキャンしてから電子データとして保存する
4-2. 電子データで発行した場合
- 電子データのまま保存する
- 電子データから紙に出力して保存する(2023年12月まで)
なお、2023年10月にはインボイス制度が始まり、仕入税額控除を受けるうえで請求書控えの作成と保存義務が発生しますので、注意しましょう。
5. 請求書を電子データで保存する場合の注意点
請求書を電子データで保存するにあたって、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つの要件が定められています。
詳しい内容は以下の通りです。
真実性の確保 | ・帳簿の記録事項において訂正もしくは削除を行った場合には、事実内容を確認できること ・帳簿の記録事項を業務処理期間経過後に記入した場合に、事実内容を確認できること ・帳簿の記録事項と関連する他の記録事項との間に関連性を確認できること ・帳簿の保存と併せて、システム概要書やシステム仕様書・操作説明書・事務処理マニュアルなどのシステム関係書類の備え付けを行うこと |
可視性の確保 | ・保存する場所に電子計算機やプログラム・ディスプレイ・プリンタ並びにこれらの操作マニュアルを備え付けて、ディスプレイの画面もしくは書面に明確に分かるような状態で速やかに出力できること ・取引年月日や勘定科目・取引金額など、その帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定できること ・日付もしくは金額といった記録項目について、その範囲を指定して条件を設定できること ・2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること |
これらの内容を満たす必要があるので、注意しましょう。
6. 請求書の取り扱いや経理業務についてお悩みならパーソルワークスデザインへ

本記事では、電子帳簿保存法の基礎知識や請求書を受け取った場合の対処方法・請求書を電子データで保存する場合の注意点などについて解説しました。
電子帳簿保存法の改正により、請求書を電子データのまま受け取った場合には、電子データとして保存する必要があります。
また、2023年10月からはインボイス制度が始まり、仕入税額控除を受けるうえで請求書控えの作成と保存義務が発生しますので、必ず覚えておきましょう。
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