ペーパーレス化とは?メリットやデメリット、社内に定着する進め方についても解説

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ペーパーレス化とは?メリットやデメリット、社内に定着する進め方についても解説

ペーパーレス化とは?メリットやデメリット、社内に定着する進め方についても解説

ペーパーレス化とは、企業で取り扱う紙の文書を電子化することです。あらゆる文書をパソコン上で確認できるようになり、業務効率化やテレワークの推進だけでなく、環境保護にもつながります。

ペーパーレス化を後押しするための法改正が行われたことにより、現在は多くの企業でペーパーレス化が進められています。しかし、「ペーパーレス化のメリットだけでなく、デメリットも知りたい」とお考えの企業担当者もいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、ペーパーレス化の意味や現状、メリット・デメリットを解説します。あわせて、社内に定着するペーパーレス化の進め方についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1. ペーパーレス化とは

ペーパーレス化とは、企業活動をするうえで紙の文書をデータ化し、保管することを指します。社内でペーパーレス化を推進すると、紙の取り扱いが少なくなり「業務効率化」や「印刷・保管コストの削減」など、多くのメリットを享受することになります。

また、データ化した文書を社内や取引先と共有し、パソコンなどの端末で閲覧することで紙のやり取りを減らせることにもなります。さらに、持続可能な開発目標である「SDGs」の達成に向けて取り組む企業の場合、ペーパーレス化は環境保護につながるとして特に力を入れています。

1-1. ペーパーレス化の対象となる書類

ペーパーレス化の対象となる書類としては、以下の3点が挙げられます。

  1. 社内文書……社内会議の資料、議事録など
  2. 社内手続き文書……稟議書、申請書など
  3. 社外取引文書……契約書、請求書など

上記の「社内文書」「社内手続き文書」といった“社内で取り扱う文書”は、「電子ワークフローシステム」で管理することで、紙を使った閲覧・申請・承認の代わりとなるでしょう。

また、「社外取引文書」に関しては、企業間で契約書や請求書などのやり取りを完結できるプラットフォームを導入することで、ペーパーレス化を促進できるでしょう。

1-2. ペーパーレス化を実現するツール

ペーパーレス化を実現するツールとして、以下の3点が挙げられます。

名称特徴・役割
OCRソフト・スキャンした画像データをテキスト化する文字認識ソフトウェア
・請求書、伝票、注文書、アンケート用紙、健康診断票などを読み取れるソフトもある
・手入力の作業が省略され、従業員の負担軽減になる点がメリット
・AIの発達により、テキストの読み取り精度が向上している
電子契約システム・紙の契約書にハンコを押して締結する代わりに、インターネットにアップしたPDF形式の電子ファイルに押印、署名ができるシステム
・紙で交付されないので、印紙税が掛からない点がメリット
・電子化により契約完了までのリードタイム短縮を実現
・タイムスタンプで電子契約書の作成日時を記録でき、改ざん防止ができる
クラウドストレージ・クラウド上にデータ化した文書を保管できるサービス
・企業向けプランを採用すると大容量でも保管できる
・アクセス権限を付与することで文書の共有化が容易となり、テレワークを推進しやすくなる
・クラウド上で保管しておくと、オフィスで災害が発生しても安全に守られるためBCP対策になる

2. ペーパーレス化の現状

国内でペーパーレス化を推進するために、2022年に電子帳簿保存法が改正されました。しかし、現場では「まだペーパーレス化は進んでいない」という声もあるようです。

ここでは、ペーパーレス化に関係する法改正の概要と、現場での実施状況について解説します。

2-1. 電子帳簿保存法の法改正

2022年1月、電子帳簿保存法が改正され「ペーパーレス化を加速させやすい法環境」が整備されました。電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿や書類を電子データで保管する方法に関する法律です。

これまで、電子帳簿を開始するには税務署へ申請が必要だったので手間が掛かっていましたが、2022年の改正で税務署への申請が不要になり、さらに「スマートフォンで撮影した画像の保存」も認められるようになりました。

このように、ペーパーレス化のハードルが低くなる法改正が実施されたため、導入を検討する企業が増加しているのです。

2-2. ペーパーレス化の実施状況

実際、どの程度ペーパーレス化は進んでいるのでしょうか。2021年に、一般社団法人日本能率協会が1,000名のビジネスパーソンを対象に実施した調査をご紹介しましょう。

同調査では、職場におけるペーパーレス化について、半数以上のビジネスパーソンが「進んでいない」と回答したことが分かりました。一方で、「ペーパーレス化にはメリットがある」と考える人は8割を占めた、と報告されています。

※参考:一般社団法人日本能率協会『2021年「ビジネスパーソン1000人調査」【ペーパーレス化の実施状況】』

以上の結果から、多くの人がペーパーレス化にメリットを感じているものの、半数以上の職場ではペーパーレス化は進んでいないことが分かります。

3. ペーパーレス化のメリット

ペーパーレス化のメリット

多くの人が感じているペーパーレス化のメリットですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは7点のメリットを挙げて解説します。

メリット(1)業務効率化につながる

まず1つ目には、当然ながら「業務効率化」が挙げられます。

電子保存したデータは検索性が高くなり、必要な文書を素早く見つけられるようになります。また、ネットワーク上で文書申請・承認を行えば、今まで紙を印刷して回覧していた手間をなくすことができ、決裁までの時間を短縮することができるでしょう。

さらに、取引先とも電子データでやり取りすることができれば、請求書などの文書を印刷して発送する必要がなくなります。

以上のように、ペーパーレス化を実施することで従業員の負担を軽減することやヒューマンエラーの抑制を実現し、業務効率化を図ることが可能になるのです。

メリット(2)文書共有が容易になり属人化防止につながる

文書をクラウドストレージに保存することによって、権限を持つ誰もが閲覧できるようになり、属人化を防止できます。また、過去に上手くいった営業用プレゼン資料を保管することで、成功パターンを他の従業員と共有でき、組織力の向上にもつなげられるでしょう。

もし、クラウド上で文書共有がされないまま担当者が離職してしまうと、業務の引継ぎはおろか、社内にノウハウやナレッジが蓄積しません。このような事態を防ぐためにもペーパーレス化を進め、業務の属人化を解消することが重要になります。

メリット(3)テレワークを推進できる

ペーパーレス化に対応していると、テレワークを推進することにもなります。コロナ禍においてペーパーレス化を進めていない企業では、テレワーク中でもハンコを押すためだけに出社する、といったケースが見られました。

今後、新型ウイルスの流行や災害時などに、再び在宅勤務を余儀なくされる状況が起こらないとも限りません。そのような事態に備え、テレワークができる環境を早急に整備しておくことが重要です。

また、転職や独立が当たり前になりつつある近年では、個人の「働き方」に関する価値観が多様化しています。ペーパーレス化を進めて環境を整えれば、希望する従業員には通常時でもテレワークを許可することができ、働き方改革にも寄与することになるでしょう。

メリット(4)紙や印刷、保管コストを削減できる

ペーパーレス化により紙の使用量が減ると、印刷・保管コストの削減につながります。通常、オフィスで紙を取り扱っていると、以下のコストが掛かってきます。

  • コピー機のランニングコスト
  • 用紙代
  • トナー代
  • 収入印紙費用
  • 資料保管室の管理コスト

紙での文書管理がなくなれば、従業員の負担が軽くなるだけでなく、省スペース化にもつながるでしょう。ファイルを保存していた場所が空けば、場合によっては会議室やリフレッシュスペースなどに有効活用できることもあるはずです。

メリット(5)紛失による情報漏えいリスクがなくなる

社内で紙の取り扱いが減ると、文書紛失による情報漏洩リスクも低減します。たとえば、取引先を訪問する際に、電車やカフェに書類をうっかり忘れてしまうリスクを防ぐことができるというわけです。文書をデジタル化してクラウドストレージに保存し、閲覧制限をかけることでセキュリティ強化にもつながるでしょう。

また、災害時のBCP対策にもなります。紙の文書と異なり紛失や破損の恐れがありませんので、緊急事態が発生してもデータにアクセスすることができます。業務が停止した場合において、必要なデータを確認できれば、迅速に業務を復旧できるでしょう。

メリット(6)社内文書のライフサイクルを管理しやすくなる

社内文書を電子化することで、文書の閲覧・修正・削除といったライフサイクルを確実に管理しやすくなります。そのため、紙文書の取り扱いと比較して、電子データは改ざんのリスクが非常に小さくなります。

紙の文書では、いつ・誰が・どこで閲覧したか明らかにすることができません。しかし、電子データなら閲覧履歴や修正履歴を確認することが可能です。そうすると、不正行為を発見しやすくなり、文書改ざんの防止につながります。

また、文書管理ツールを使用して承認作業を行う場合、承認者を飛ばして次に進めることができません。そのため、承認漏れや承認経路の間違いがなくなり、健全な文書管理が実現することになるでしょう。

メリット(7)環境保護につながり企業イメージが向上する

紙の消費は森林破壊の一因となっています。また、不要になった紙を焼却処分するとCO2が排出されますので、地球温暖化にもつながってしまうでしょう。ですから、ペーパーレス化に取り組むことで紙の使用量を削減でき、環境保護につながるのです。

ペーパーレス化を実践して、紙の使用と廃棄量を抑えていくことは、これからの時代において重要でしょう。そうした「SDGs」の取り組みに貢献するだけでなく、環境保護に取り組むことで、企業としてのイメージも向上するでしょう。

4. ペーパーレス化のデメリット

ペーパーレス化の導入は、メリットだけではありません。ここでは3つのデメリットを挙げて解説していきます。

デメリット(1)導入時に労力やコストが掛かる

ペーパーレス化を進めるには新しく作成する文書だけでなく、紙で保管された既存文書も電子化する必要がありますので、導入時に労力やコストが掛かります。膨大な量の資料が保管庫にある場合には、電子化が必要な文書の精査に手間が掛かってしまうでしょう。

社外文書のペーパーレス化に取り掛かるのであれば、取引先にも対応を求める必要があります。電子文書の取り扱いルールやタイミングを策定し、社内外に周知していくには、どうしても時間や労力が掛かってしまいます。

また、ペーパーレス化に向けて新たにツールを導入する必要がある際には、導入コストだけでなく使い方を習得するための時間も必要になってくるでしょう。

デメリット(2)社内オペレーションの変更や定着に手間が掛かる

コストを投じてペーパーレス化のためにツールを導入したとしても、さらに社内オペレーションの変更や定着に手間が掛かる恐れがあります。ITリテラシーが低い従業員にツールを定着させるには時間が掛かりますし、ペーパーレス化に抵抗を示す人がいることも考えられますので簡単ではないでしょう。

また、紙の文書と電子化された文書のフォーマットが異なれば、オペレーションを変更する必要性も出てきます。具体的には、文字などを手書きで挿入できなくなりますので、フォーマットを電子文書用に刷新する必要があるでしょう。また、フォーマット変更後、その運用方法をマニュアル化する作業も発生します。

以上のように、ペーパーレス化には「従業員の抵抗」や「社内ルールの変更」など、多くの対応が必要になってきます。そのため、経営者を巻き込みながらトップダウンで実行し、定着に向けて従業員をフォローしていくことが重要になるでしょう。

デメリット(3)電子化できない書面があると管理が煩雑になる

電子化による保存が認められていない文書がある場合は、電子データと紙媒体の両方を管理する必要があるため管理が煩雑になります。

たとえば、「宅地建物取引業法」における一部の契約書や説明書は、電子化が認められていません。ペーパーレス化を進める前に、自社で取り扱っている文書は電子化が可能かどうかを整理しておく必要があるでしょう。

5. ペーパーレス化を社内に定着させる5ステップ

それでは、ペーパーレス化を社内に定着させるためのステップについて、5つに分けて解説していきます。

STEP(1)まずは経営層を巻き込む

ペーパーレス化をスムーズに実践するには、経営層を巻き込んで取り組んでいくことが重要です。前述した通り、従業員のなかには重要な書類をクラウド上に保管することを反対する人がいるかもしれません。

ペーパーレス化を導入すると業務効率化など多くのメリットがある」ということを、経営層から従業員にしっかりと説明していく必要があるのです。

STEP(2)対象となる紙媒体の業務を特定する

紙が使われている業務を特定し、優先順位をつけながらペーパーレス化に取り組む計画を立てていくのが次のステップです。

「紙を使うことで非効率になっている業務」から着手していくと、速やかにペーパーレス化を推進できるでしょう。

STEP(3)従業員に協力を求める

ペーパーレス化を推進するためにも、全社の従業員に周知して協力を求めましょう。総務や情報システム部門だけでなく、各部門の代表者がリーダーシップを取っていくことが重要です。

全社で滞りなくペーパーレス化を実行するためには、各部門でペーパーレス化の重要性や目的を共有する必要があるのです。

STEP(4)機器やツールをそろえる

ペーパーレス化の実現に向けて、閲覧用のタブレット端末やOCRソフトといったツールを準備していきましょう。自社の課題解決につながる、操作性の高いツールを導入することが重要です。

また、従業員のITリテラシーに合ったツールを選定することで、業務効率化を一層実現しやすくなるでしょう。

STEP(5)ルールを決めて周知する

最後に、運用ルールを決めたうえで従業員に周知していきます。ペーパーレス化に向けて環境を整備しても、ツールの使い方や文書管理の方法が明確でなければ、定着しにくいものです。最低限、以下のポイントを決めておきましょう。

  • 電子ファイルの作成・保存・編集方法
  • ファイル管理者
  • バックアップの方法
  • アクセス権限の設定ルール
  • 承認経路

これらを決めて周知したうえで、運用を行っていきましょう。

6. ペーパーレス化を推進して業務効率化を進めよう

ペーパーレス化を推進して業務効率化を進めよう

企業で取り扱う紙の文書を電子化して保存する「ペーパーレス化」を推進すると、業務効率化が実現します。それにより、紙の印刷や保存、管理にかかる手間やコストも削減されます。また、属人化の解消やテレワーク推進にもつながるでしょう。

ここまでお読みいただいても、「業務効率化をしたくてもペーパーレス化をする時間がない」「自社で行うにはハードルが高い」と考える企業担当の方もいらっしゃるかも知れません。もし紙の取り扱いが多い業務であれば、外部委託をすることでペーパーレス化と同様のメリットを享受することができるはずです。

私たちパーソルワークスデザインでは、「経理業務アウトソーシング」や「経費精算アウトソーシング」といったBPOサービスを提供しています。紙を使う機会が多い経理部門の業務をアウトソーシングできますので、業務効率化が可能です。

もし、経理部門での紙の取り扱いにお困りでしたら、以下のページをご覧いただきお気軽にお問い合わせください。

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