カスタマーハラスメントとは?基礎知識や4つの対策方法を解説

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カスタマーハラスメントとは?基礎知識や4つの対策方法を解説

カスタマーハラスメントとは?基礎知識や4つの対策方法を解説

近年、問題とされている『カスタマーハラスメント』
テレビなどで取り上げられることも多く、社会問題のひとつとして多くの人に認識されています。

しかし、改めて「カスタマーハラスメントとは何ですか?」と聞かれて、はっきりと答えられる人はあまりいないのではないでしょうか?

そこで本記事では、カスタマーハラスメントがそもそもどんな行為のことをいうのか、またカスタマーハラスメントに対する正しい対処方法などについてご紹介します。

カスタマーハラスメントを放置しておくと、会社にとって大きな問題にもなりかねません。
予め対処方法をしっかりと確認しておきましょう。

1. カスタマーハラスメントとは

「カスタマーハラスメント」とは、顧客や消費者からの度を超えた、または悪質なクレーム・要求のことです。
略称で「カスハラ」と呼ばれることもあります。

カスタマーハラスメントは次に紹介する通り、さまざまな類型がありますが、どれも「顧客や消費者の立場を利用して過度・不当な要求を行う」点で共通しています。

1-1. カスタマーハラスメントの例

カスタマーハラスメントには複数のパターンがあります。
以下いずれかの特徴に当てはまった場合は、カスタマーハラスメントと判断してよいでしょう。

類型発言や行為の例
優位的地位の乱用
(顧客や消費者として優遇を求める言動)
・「俺は客だ」「お客様は神様だぞ!」「お金を払っているのだからやって当然」「対応次第では今後を考える」などの発言
・不買運動やネット炎上をちらつかせて値引きやサービスを要求する
・企業や店舗側の人間が質問した際に「客の話が信用できないのか」などの言いがかりで質問を遮断する
不当・過剰・法外な要求・社会通念上相当の範囲を超える対応の強要・コンプライアンス違反の強要・対価的に相当な範囲を超えた要求
・特別の利益や便宜の供与を求める要求
・法令違反の内容への対応要求
・暴行・傷害・強要・恐喝・脅迫・不退去・器物破損・威力・偽計業務妨害・名誉棄損などの刑法違反
・一方的な主張の繰り返し
職務妨害行為
(就業環境または業務推進阻害行為)
・長時間にわたる担当者の拘束
・その場で解決できない事象への即時対応要求
・正当性のない担当者の交代要求
・虚偽の申し立て
・就業時間後の拘束
・他業務実施の妨害
・義務なき文書の提出要求
・大声を出す・暴れるなどの施設の平穏を害する言動
・同一・類似案件への執拗な対応(回答)要求や電話
・業務上必要な機器などを奪う・破壊する行為
・従業員の警告を無視する
担当者の尊厳を傷つける行為
(人格否定・意思決定権の侵害)
・暴言・誹謗中傷
・個人的な責任追及(賠償・補償要求)
・個人情報のさらしなどをちらつかせること
・無許可での撮影や録音
・土下座や人格・尊厳を傷つける行為の強要(セクハラ・性的自由の侵害を含む)
・SNSなどによる連絡・返信要求・強要
・職場・通勤経路・自宅での待ち伏せをはじめとした恐怖を与える行為
・必要以上の連絡先・個人情報などの開示要求
・そのほか嫌がらせ行為

2. カスタマーハラスメントとクレームの違い

カスタマーハラスメントと混同されるものに、「クレーム」があります。
カスタマーハラスメントとクレームを同じものとしてとらえる方も多いですが、このふたつはまったく違うものです。

クレームは商品の向上・改善を目的とします。
商品やサービスに対する『要求』や、『依頼』の形をとって伝えられる行為です。
クレームは商品やサービスをよりよいものにするために役立つ意見であり、正しく対処すれば顧客と企業の両方にメリットをもたらします。

一方、カスタマーハラスメントは『嫌がらせ』を目的としています。
先ほどの通り、カスタマーハラスメントには種類がありますが、どれも理不尽な嫌がらせや悪質ないじめです。
ですから、カスタマーハラスメントの場合には、要求を通せば通すほど悪化するため、適切な対処が求められるのです。

このように、カスタマーハラスメントとクレームはまったく違うものです。
一見区別がつかないように感じる言動でも、これらの違いを押さえておけば判断できるかと思います。
クレームは正しく受け止め、カスタマーハラスメントは被害を最小限に抑える処理を心がけましょう。

3. カスタマーハラスメントが増加した背景

カスタマーハラスメントが増加した背景について

近年、カスタマーハラスメントが増加し、ニュースでも取り上げられるようになりました。
これには、複数の原因が関係しています。ここでは、3つの原因を挙げて解説していきましょう。

【カスタマーハラスメントが増加した原因】

(1)ストレスの多い社会

現代は昔に比べて、ストレスとなる要因が多いといわれています。
ストレスを強く感じている人のなかには、ストレス発散を目的としてカスタマーハラスメントを行う人がいます。

(2) 企業ごとに異なるサービス

企業ごとに違うサービスや、過剰にサービスをし過ぎてしまうこともカスタマーハラスメントを増やす原因のひとつです。
同じ商品やサービスを取り扱っている企業や店舗でも、それぞれ価格やサービス内容に違いがあります。
このサービスの違いは、競合他社との差別化を図り、より多くの顧客に選んでもらうために行われていることです。
サービスごとの違いは、サービスの手厚さも例外ではありません。

サービスの違いは、企業や店舗が競合他社に差をつけるために行っていることですから、当たり前といえば当たり前のものです。
しかし、商品やサービスを利用する顧客の中には、サービスに対して独自の基準を設けている人もいます
これらの人は、自分の設けた基準から外れたサービスを認めません。
結果、悪質な要望を押しつけるカスタマーハラスメントとなるわけです。

(3) SNSの発達

また、SNSの発達によりネットを介した匿名での嫌がらせができるようになったのも、カスタマーハラスメントを増加させる原因であるといわれています。
個人を特定されない状態でハラスメントができることから、SNSを使った嫌がらせや脅迫が横行するようになりました。
カスタマーハラスメントは、社会の移り変わりや技術の進歩など、さまざまな要因により引き起こされているといえるでしょう。

4. カスタマーハラスメントによる悪影響

それでは、増加傾向にあるカスタマーハラスメントによって、企業や店舗にはどのような悪影響があるのか挙げてみます。

【カスタマーハラスメントにより発生する悪影響】

  • 従業員の離職
  • イメージダウンや業績悪化
  • 安全配慮義務違反

これらは、放置すれば企業や店舗に大きな被害をもたらす行為です。それでは、カスタマーハラスメントで発生する悪影響について1つずつ解説していきます。

4-1. 従業員の離職

カスタマーハラスメントのターゲットは、従業員であることが多いです。
これらの対処には大きなストレスがかかるため、従業員が離職するリスクが発生します。

被害が続けば、ターゲットになった従業員だけでなく、ほかの従業員にも影響が出ることになるでしょう。
カスタマーハラスメントの被害が続く職場で働きたいと思う人は、ほとんどいないからです。
結果、従業員が企業や店舗に定着しない状況が作られてしまうのです

そうして、ベテランの従業員が定着せず、業務に不慣れな従業員のみで対応する状況は、さらなるクレームや業績悪化の原因のひとつにもなりかねません。カスタマーハラスメントによる従業員の離職は、企業や店舗にとって頭の痛い問題といえるでしょう。

4-2. イメージダウンや業績悪化

前章でも解説しましたが、カスタマーハラスメントに当たる行為の中には、ネットやSNSの書きこみを使ったものがあります。
企業に対するウソの悪評や、誹謗中傷によるハラスメントは毎年数多く確認されています。

たとえウソやいわれのない誹謗中傷でも、企業や店舗のイメージダウンにつながってしまうことには変わりありません。
イメージが著しくダウンすれば、業績悪化を招く可能性もあるのです。

また、カスタマーハラスメントの中には、ほかの顧客への迷惑行為もあります
そうなると顧客の減少にも繋がってしまい、売上も当然ながら下がってしまうことになるのです。

4-3. 安全配慮義務違反による損害賠償請求

「安全配慮義務」とは、「企業が労働者に対して安全と健康を確保しつつ、就業するために必要な配慮をする義務」のことです。
この中には、カスタマーハラスメントに遭遇した従業員を守ることも含まれています。
つまり、カスタマーハラスメントを放置することは安全配慮義務の違反に当たる行為なのです。

カスタマーハラスメントへの対処が不十分だと、ターゲットになった従業員から安全配慮義務違反の損害賠償請求をされる可能性があります。
これを防ぐためにも、普段からカスタマーハラスメントに注意し、対策を怠らないようにしましょう。

5. カスタマーハラスメントの4つの対策方法

カスタマーハラスメントの4つの対策方法について

カスタマーハラスメントは、業種や企業・店舗を選ばず、どこでも発生する可能性のあるものです。
そのため、発生したらすぐに対策しなくてはなりません。
カスタマーハラスメントに有効な対策としては、以下の方法があります。

【カスタマーハラスメントに有効な4つの対策】

  1. 企業や部署全体で対処する
  2. 専用の対策マニュアルやフローの作成
  3. 証拠を残す
  4. いざというときは行政や専門家の力を借りる

それぞれの内容について、次の項目で順番に解説していきます。

5-1. 企業や部署全体で対処する

カスタマーハラスメントが発生した際に、従業員が一人だけで対応すると悪化してしまう可能性が高くなります。
ですから、カスタマーハラスメントが発生した場合には、複数人で対応するか、上司や上長と一緒に対応しましょう。そうすることで、ある程度はけん制することができるはずです。

また、企業や店舗側の対策としては、相談窓口の開設も有効です
カスタマーハラスメントが発生した際に、内部的な相談窓口があれば、いつでも相談や指示を受けられることになります。そうして従業員が安心して対応できる体制を整えれば、離職による悪影響も防げるでしょう。カスタマーハラスメントへの対処として、企業や店舗全体で取り組む体制を作っていきましょう。

5-2. 専用の対策マニュアルやフローの作成

カスタマーハラスメント専用の『対策マニュアル』や『フローの作成』も有効な手段です。
マニュアルやフローがあれば、ハラスメントが発生しても落ち着いて対処できます。

カスタマーハラスメントは企業や店舗側が冷静に対処すれば、被害を最小限に抑えられるものです。
マニュアルやフローを作成して、従業員に定期的に読みこんでもらうとよいでしょう。
また、マニュアルやフローを用いて対策研修を行っておくのも有効です

5-3. 証拠を残す

カスタマーハラスメントの中には、「言った・言わない」の水掛け論に持ち込むものや、注意や案内を「聞かされていなかった」と文句をつけるやり方で嫌がらせをするケースがあります。
これを防ぐには、商品やサービスを提供する際に証拠を残すことが有効です。

具体的な例としては、以下の方法があげられます。

【商品やサービス提供・問い合わせの証拠を残す方法】

  • 商品の取扱説明書やサービス契約時の契約書に、トラブル防止のための取り決めを明記する
  • 問い合わせ窓口のあいさつや、自動音声案内の初めに音声の録音をする旨を伝える
  • 企業のオフィスや店舗入り口に、商品・サービス・オフィスや店舗利用に関する取り決めを明記したポスターを貼っておく

取り決めの明記や証拠を残す作業を行っていることを伝えるだけでも、カスタマーハラスメントを予防できます。
また、取り決めの明記は、一般のお客様に対する案内としても有効です
積極的に活用しましょう。

5-4. いざというときは行政や専門家の力を借りる

カスタマーハラスメントの行為の中には、犯罪行為なども含まれています。
あまりにも悪質な行為の場合は、企業や店舗だけで対応してはなりません。
警察や弁護士の力を借りましょう。

カスタマーハラスメントの中には、企業や店舗の注意だけでは防げないケースもあります。自分たちだけで対応しきれないような悪質なカスタマーハラスメントに遭遇した場合には、迷わず専門家に通報・相談してください

6. まとめ

カスタマーハラスメントは、企業と店舗だけでなく、利用する顧客にも迷惑がかかる悪質な行為です。
放置すればするほど影響が大きくなりますから、少しでも早く対応できる体制を整えておきましょう。

パーソルワークスデザインでは、カスタマーハラスメントに対応するためのスタッフ向け研修・リーダー向け研修をご提供可能です。トラブルに対応するための、マニュアルやフローを用いた対策研修や、実際に応対するロールプレイング研修をご提供できます。

また、カスタマーハラスメントが発生した際に「内部的な相談窓口を設けたい」という場合にもご相談ください。社内のお問い合わせ窓口についても数多くの実績やノウハウがありますので、お手伝いができるかと思います。

カスタマーハラスメントについて対策を講じたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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