採用マーケティングの定義とメリット、5つの手法を交えた実践ステップについて解説

人事担当者の方であれば、ここ数年で「採用マーケティング」がトレンドとなっていることはよくご存知かと思います。
しかし、具体的に「採用マーケティングとは何なのか?」「具体的にはどういう手法があるのか?」という話になると、よく分からないという担当者の方も少なくないのではないでしょうか。
そこで本記事では、「採用マーケティング」の定義や、メリット・デメリット、それから具体的な5つの手法を交えつつ、実践していくためのステップについて分かりやすく解説していきます。
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目次
1. 採用マーケティングとは? その定義
「採用マーケティング」という言葉は、当たり前ですが「採用」と「マーケティング」というキーワードで構成されます。つまり、自社の採用活動にマーケティングの考え方と手法をプラスしたものが採用マーケティングだというわけです。
自社にマーケティング部があり、商品やサービスのマーケティング活動を行っているという場合、その担当者の思考や施策を人事担当者にも落とし込んでいくことが、採用マーケティングといえるかも知れません。
マーケティングと採用マーケティング
では具体的に、マーケティングと採用マーケティングの違いについて見ていきましょう。マーケティング活動ではもちろん、会社が売り手で顧客が買い手です。顧客が会社に代金を支払いますので、会社としては「顧客に代金を支払い続けてもらうにはどうすれば良いか?」を常に考え、あらゆる手法を取り入れながら分析していきます。
具体的には、「顧客に必要不可欠な商品やサービスは何か?」「顧客に愛される商品やサービスは何か?」を考えながら、仮説を立て、検証・改善するというPDCAサイクルを回していきます。
では次に、採用マーケティングではどうなるかを見ていきましょう。
人事担当者であれば「今年は売り手市場だった」「買い手市場になればいいのに」といった会話をしたことがあるのではないでしょうか。
採用マーケティングでは、求職者が売り手で会社が買い手となります。そして、総務部や人事部の担当者は「採用活動で他社より魅力ある会社と思われるためには?」をいつも考え、あらゆる手法を取り入れて分析していきます。これが採用マーケティングになります。
具体的には、「自社に入社したいと思ってもらうにはどうすれば良いか?」「自社で働き続けたいと思ってもらうにはどうすれば良いか?」を考えながら、仮説を立て、検証・改善するというPDCAサイクルを回していくわけです。
2. 採用マーケティングが注目される理由
冒頭で「ここ数年で『採用マーケティング』がトレンドとなっている」とお伝えしましたが、ではなぜ採用マーケティングが注目されているのでしょうか。その理由について2つを挙げて解説してみましょう。
理由(1)会社を渡り歩いていく人が増えてきた
かつては日本も経済成長を続けており、「終身雇用」の時代がありました。多くの会社は社員を一生守れるだけの力があり、働けば働くほど役職を得られて給与は上がり、会社に一生を捧げる人も多く、転職する人は稀だったのです。
しかし現代は、不景気が続いており、多くの会社はいざというときに社員を守ることができません。人より働いたからといって、必ずしも役職を与えられるわけでもなく、給与も横ばいの会社が多いのではないでしょうか。
一方で、業績が下がると一律で給与を減らされてしまい、ボーナスもカット。そうして、多くの優秀な人材が会社にとどまることなく転職を選び、会社を渡り歩いていくという世の中に変わってきています。
そのため、企業としては多くの人材に選んでもらう必要が強くなってきており、採用マーケティングの重要性が増してきたといえるでしょう。
理由(2)人材獲得の競争が激化してきた
一つ目の理由にも関連してきますが、会社を渡り歩いていく人が増えて人材の流動化が進んでいるだけでなく、「会社が増え、働く人は減っている」という背景もあります。国税庁の「会社標本調査」によると、全国の法人数は2012年に253万5272社でしたが、2020年には280万4371社となり、8年で27万社近く増えています。
※参考:「会社標本調査」国税庁
なかには採用活動を行っていない零細企業も多いと思われますが、就活生や転職活動中の人にとっては選択肢が増えたといえるでしょう。一方で、厚生労働省の「労働力調査」によると、労働力人口は2019年の6886万人をピークに2021年には6860万人と2年連続で合計26万人減となっています。
※参考:「労働力調査」厚生労働省
また、総務省の「人口推計」によると2022年11月の20~24歳の人口は623万人、15~19歳は551万人と、これから新卒になる人口もどんどん減っていくことが予測できます。
※参考:「人口推計」総務省
そのため、各企業ともに「人手不足」について大いに懸念してきているわけです。
「いかに優秀な人材を自社に多く集められるか」「いかに、今いる社員が自社から去らないようにするか」を真剣に考えなくてはならない時代となったのです。
そこで、多くの先進的な企業がこぞって導入し始めたのが、採用マーケティングです。続いては、その採用マーケティングの具体的な手順と、有効な5つの手法についてご紹介します。
3. 採用マーケティングの実践ステップ

では、採用マーケティングを実践するためのステップとして、実際の手法を1つずつご紹介していきましょう。
採用マーケティングにおける手法(1)STP分析
まずは「STP分析」です。STP分析のSは「セグメンテーション」で、市場を分割することです。Tは「ターゲティング」で、分割した市場のどこを狙うかを決めることです。そしてPは「ポジショニング」で、自社の立ち位置を決めることです。それぞれ採用マーケティングに落とし込んで考えると、下記のようになります。
- S → 新卒か中途か、理系か文系か、院卒か大卒か専門卒か
- T → ほしい人材は具体的にどのような人材像なのか
- P → 自社は求職者からどう見られるべきか
Tについてはマーケティング用語の「ペルソナ」とも言い換えることができるでしょう。ペルソナが明確になることで、「自社に入社したいと思ってもらうにはどうすればいいのか?」がより絞りやすくなります。
採用マーケティングにおける手法(2)3C分析
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の頭文字をとったマーケティングのフレームワークです。この3C分析は、企業や事業部、製品やサービスなど、さまざまな分析で活用されます。
当然のことですが、市場や顧客が変化すれば、競合と差別化すべきポイントも変わってきます。競合が変化をすれば、自社の強みや弱みも変わってくるでしょう。このように、外的要因や内的要因を考慮しながら自社情報を可視化できることが、3C分析のメリットでもあります。
そしてこの3C分析は、そのまま採用活動にも展開することができます。まず、3C分析の「Customer(市場・顧客)」を「採用活動の候補者」に置き換えてみましょう。そうすると「Competitor(競合)」は採用市場において自社と比較検討される企業になり、「Company(自社)」は採用活動における強み・弱みに絞ることができます。
このように3C分析をうまく活用することで、採用市場における自社の立ち位置と競合優位性を明確にすることができるのです。3C分析によって自社の立ち位置と競合優位性が可視化できたら、次のSWOT分析によって「採用における自社の価値」を明確にしていきましょう。
採用マーケティングにおける手法(3)SWOT分析
STP分析の「P」や3C分析の「Company」では自社を分析するわけですが、その次には「SWOT分析」も行いましょう。「SWOT分析」とは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)と、それぞれの頭文字を集めた造語であり、経営戦略の策定やマーケティング戦略を行う際の代表的なフレームワークです。
まずは、自社の内部環境要因と外部環境要因について、「好ましい側面」と「好ましくない側面」から整理していきます。具体的には、下記の4つの象限を分析します。
<内部環境要因>
- 強み(Strength)
自社における強みとなる人材、ノウハウ、機能、技術、体制などの経営資源
- 弱み(Weakness)
競合と比べて見劣りしていたり、不足していたりする経営資源
<外部環境要因>
- 機会(Opportunity)
好景気、技術革新、トレンドの変化など、企業にとって追い風となる要因
- 脅威(Threat)
自社の努力だけでは防ぎようのないリスク。市場環境の悪化や法規制などの悪影響の要因
採用マーケティングにおける手法(4)キャンディデイトジャーニー
STP分析のTで「ほしい人材」のペルソナ設定ができたら、キャンディデイト(求職者)ジャーニーを設定していきます。
キャンディデイトジャーニーとは、マーケティング施策でよく用いられる「カスタマージャーニー」を求職者向けにアレンジしたものです。具体的には、求職者の行動や嗜好を、「感情」の時間軸に沿って「見える化」していきます。そして、情報収集をするところから、応募して入社に向けた意思決定をするまで、というストーリーを組み立て、どのようなプロセスを経て採用に至るのかを明確にしていくわけです。
企業側としては、どのチャネルで求職者と接点を持って、どのようなメッセージを訴求していくべきかを考える手助けになります。チャネルとしては、自社の採用ページや求人サイトの採用情報、SNS、会社説明会、面接などが該当するでしょう。
キャンディデイトジャーニーの全体設計としては、以下のような段階に分けて行っていきます。
- 目標の策定
- ターゲットとニーズの策定
- 全体工程の策定
- 遷移指標の策定
採用マーケティングにおける手法(5)PDCAサイクル
冒頭でも少しPDCAサイクルに触れましたが、求職者の行動状況を計測しながら、PDCAサイクルを回して改善に繋げていくことも重要なステップです。
従来の採用では、人事担当者の記憶や経験、勘などに頼ってしまう部分がありました。しかし、現代の採用マーケティングでは、ツールの導入などによって数値化・データ化が容易になってきています。
具体的には、自社へのエントリー率、採用ページのページビュー数、メールの開封率、説明会への参加率、面接の実施率、被紹介者の応募率、などの様々なデータを分析して振り返り、改善に繋げていきましょう。
ひとつ例を挙げると、社員インタビューの動画コンテンツを作った場合、そのコンテンツがターゲット層である求職者にしっかりと訴求できていたのか、自社のどのポイントに魅力を感じてもらえたのか、動画の閲覧データを確認することで気付きを得ることができるはずです。実際の求職者の動きから、前述のペルソナやキャンディデイトジャーニーが正しく機能しているのかを振り返ることが重要なのです。
ただし、いくつものシステムでデータを管理しようとすると多くの工数がかかってしまいますので、ATS(採用管理システム)を活用するのがおすすめです。グループウェアや労務ソフトなど、さまざまなシステムとの連携もできますので、ATSを効果的に使いながらPDCAサイクルを回していくようにしましょう。
4. 採用マーケティングを導入するメリット
続いて、採用マーケティングを導入するメリットを3つ挙げて解説してみましょう。
メリット(1)ターゲット人材からの応募が増加する
採用マーケティングを導入することで、求職者に効果的にアプローチできるようになりますので、ターゲットは従来の採用よりも広く設定することができます。
つまり、今すぐは転職を考えていない潜在層や、従来ならターゲット外にしていたはずの退職者に向けても発信をすることになります。そうして潜在層の認知変容を起こすことができれば、これまでよりも多くの応募数が見込めるようになるはずです。
メリット(2)自社にマッチする人材が見つけやすくなる
採用マーケティングの手法をご覧いただいて分かるように、採用したい人材として明確にペルソナを設定することで、自社にマッチする人材が見つけやすくなります。
潜在層に向けた情報発信では、採用情報に限らず自社のメッセージや社員の様子、社内の文化や福利厚生といった様々な角度からの魅力を伝えていきます。そのため、応募に至った時点ですでに求職者にも自社の働き方や文化が理解されていることになります。さらには、内定辞退や入社後の早期離職の割合が低下することも期待できるでしょう。
メリット(3)採用コストの削減につながる
採用マーケティングでは、訴求したいターゲットを明確にして、そのターゲットに向けたチャネルを設定していきます。そうすることで効果的な訴求が可能になり、広告費は最適化され、長期的な採用コストの削減も見込めることになります。
採用マーケティングでは求職者に向けたコンテンツや、マーケティングのナレッジが蓄積されていきますし、PDCAサイクルを回しながら繰り返し活用することもできますので、コストパフォーマンスが高い、安定した施策になっていくことも期待できます。
5. 採用マーケティングを導入するデメリット

では次に、採用マーケティングのデメリットを2つ挙げて解説してみましょう。
デメリット(1)一時的に人事部の時間外労働が増える
採用マーケティングを行うことで、人事部の担当者の時間外労働が一時的に増えることがよくあります。
特に、メールやSNSの対応などは返信するタイミングを決めて対応するとか、リファラル採用では社員からの相談に乗る時間を決めてしまうなど、予めルールを決めておかないと可視化されない工数が増加してしまう可能性があります。
デメリット(2)成果が出るまでに時間がかかる
採用マーケティングとしてSNSでの採用やリファラル採用など、新しい採用手法を導入したとしてもすぐには効果が出ない可能性があります。
例えば、チャネルとしてSNSを使って採用マーケティングを進めていこうと思っても、まずは採用情報などを地道に発信し続けて認知してもらう必要性があります。はじめたからといってすぐには成果が出ませんが、そのことをしっかりと認識しながら、求人媒体や転職エージェントとの併用を考えて採用活動を進めていく必要があるでしょう。
6. 採用のアウトソーシングサービスならパーソルワークスデザインへ
本記事では、採用マーケティングの定義や導入ステップ、そしてメリットやデメリットについてご紹介してきました。
人材不足が各企業で深刻化するなか、採用活動の品質向上は喫緊の課題となっています。自社にフィットする人物を探し出すうえで、外部のプロの手を借りることは有効な手段といえるでしょう。もし「採用」に関してなにかお困りごとがありましたら、私たちパーソルワークスデザインへお任せ下さい。
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