アルコールチェックの確認や記録はどのように行うのか?記入例や「よくある質問」を解説!

監修
弁護士法人プラム綜合法律事務所
弁護士 梅澤 康二
アルコールチェックに関して、
「具体的にどのように確認し、記録すれば良いのかわからない」
「今の確認・記録方法が間違っていないか不安だ」
といったお悩みをよく耳にするようになりました。
業務が忙しいなかで、企業へ新たに課された『アルコールチェック』を法律の要件通りにこなすうえでは、さまざまな不明点が生じるものです。
そこで本記事では、どのようにアルコールチェックを実施し、記録をすれば良いのか、具体的に解説していきます。「よくある質問」とその答えだけでなく、安全かつ効率的にアルコールチェックを行う方法についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
1. アルコールチェックとは?
業務として自動車を運転するドライバーに必要な「アルコールチェック」は、道路交通法の施行規則で特定事業所に定められた業務です。
※参考:e-Gov法令検索「道路交通法施行規則 第九条の十」
具体的には、自動車の安全運転に必要な指導や管理業務を担う「安全運転管理者」が、ドライバーの運転前後に、酒気(アルコール)を帯びていないかを確認する必要があります。
アルコールチェックの詳細な確認方法は後述しますが、ドライバーのアルコールの有無は目視などで確認していきます。
令和4年4月1日までは、いわゆる“緑ナンバー車”と呼ばれるバスやトラックなどの運送事業に用いられる自動車を保有している企業に対して運転前後のアルコールチェックが具体的に義務づけられていました。
しかし、令和4年4月1日の道路交通法の施行規則改正を受けて、自動車を運送事業に用いない白ナンバー車を一定数所持する企業においても、運送事業者と同程度のアルコールチェックが必要となったのです。
この法律改正により、白ナンバー車を管理する安全運転管理者には、以下の業務が義務づけられました。
- 運転前後に酒気帯び(アルコール)の有無を確認すること
- アルコールチェックは目視などの方法で行うこと
- アルコールチェックの結果について法定の事項を記録すること
- 記録した内容を1年間保存すること
これが「アルコールチェックの義務化」と呼ばれるものです。
1-1. アルコールチェック義務化の対象
アルコールチェック義務化の対象となるのは、特定の条件を満たす事業所です。このような事業所について安全運転管理者の選任が義務付けられ、同管理者の職務としてアルコールチェックもおこなう必要があるという構造です。
具体的には、警察庁が定めている通り以下の条件に該当する事業所においては安全運転管理者の選任が必要になります。
- 乗車定員が11人以上の自動車を1台以上保有している場合
- そのほかの自動車を5台以上保有している場合
※参考:警察庁「安全運転管理者制度の概要」(PDF)
なお、大型の自動二輪車、もしくは普通の自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として扱われます。自動車の台数が下記の通り一定台数以上であった場合は、安全運転管理者を追加で選任する必要も発生します。
- 20台以上40台未満:副安全運転管理者を1名選任
- 40台以上の場合:20台増えるたびに追加で1名の副安全運転管理者の選任が必要
複数の事業所がある場合には、条件を満たす事業所の数だけ安全運転管理者を選任しましょう。
1-2. アルコールチェックに関する罰則
アルコールチェックを法律通りに実施しないことについてこれを直接処罰する罰則規定はありません。
しかし、安全運転管理者が適切にアルコールチェックなどの職務を遂行できていない場合は、道路交通法第74条の3にもとづき、安全運転管理者解任を命じられることがあります。この解任命令にも従わなかった場合には、50万円以下の罰金が企業に科される可能性があります(令和4年10月までは罰金額が「5万円以下」でしたが、令和4年10月からは罰金額が50万円以下に変更となりました。)
飲酒運転をしたドライバーには当然ですが罰則が適用されます。また、事業者側がこのような飲酒運転を容認していたような場合には、その担当者や責任者についても罰則適用があり得ますので、注意しましょう。
法律で義務づけられている業務を適切に実施しなかった場合、企業の評判を落とすリスクにもつながります。アルコールチェックを適切な方法で、抜け漏れなく行うことが重要といえます。
2. アルコールチェックで確認・記録すべき内容とは

ここからは、アルコールチェックで確認・記録が必要な内容について解説していきます。
2-1. アルコールチェックの際に確認すべきこと
アルコールチェックで確認するべきことは、当然ながら「ドライバーが酒気を帯びていないか」です。確認方法は法律により明確に定められており、担当者はドライバーの業務開始前後に、以下の点を確認する必要があります。
- ドライバーの顔色(赤くなっていないか)
- 呼気の臭い(お酒の臭いがしないか)
- 会話した際の声の調子(ろれつに異常がないか)
ドライバーが飲酒状態にないことが認められれば、検査完了です。また、原則として確認担当者は、以下の者に限られます。
- 安全運転管理者
- 副安全運転管理者
- 安全運転管理者を補助する者
社内の誰もがアルコール確認作業をできるわけではありませんので、注意しましょう。
また、特別な理由がない限りは、対面においてドライバーのアルコールチェックをおこなうことが原則となっています。
しかし、直行直帰や出張などにより、事業所から遠く離れた場所で運転業務を開始・終了する場合には対面での確認が困難であるため、この限りではありません。そのような場合には、「これに準ずる適宜の方法」として、アルコール検知器を併用することを前提に下記のような方法でアルコールチェックを実施しても問題ないとされています。
方法1 | カメラやモニターを通して、ドライバーの顔色の状態、会話した際の声の状態を確認しつつ、アルコール検知器の数値を確認する |
方法2 | 業務無線や携帯電話、そのほかドライバーと直接会話できる方法によって、会話した際の声の調子を確認しつつ、アルコール検知器の数値を報告させる |
なお、アルコールチェックの補助業務を外部業者に委託することも認められています。必ずしも自社の安全運転管理者が確認をする必要はありません。
2-2. アルコールチェックの際に記録すべきこと
目視などによるアルコールチェックが完了したら、以下の事項を抜け漏れなく記録しましょう。
- 確認した担当者の氏名
- 確認した日時
- 確認されたドライバーの氏名
- ドライバーが業務で乗車する自動車の、登録番号もしくは識別番号/記号
- 確認方法
- 酒気帯び(アルコール)の有無
- 指示事項
- 備考(必要に応じて)
法律で定められた書類様式や指定ファイルはなく、独自の様式で作成しても問題ないとされていますが、上記の項目は確実に記入する必要があります。
また、記録したものは1年間保存しなければなりませんので、注意が必要です。
※参考:警察庁「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行に伴う安全運転管理者 業務の拡充について(通達)」(PDF)
2-3. 記入例
アルコールチェックが終了した後は、次のような表に検査結果を記入していきましょう。

※出典:一般社団法人千葉県安全運転管理協会「アルコール検査確認結果記録表の記載例」(PDF)
上図の「運転車両」についてはナンバープレートの文字を入れますが、地域名(例:千葉)・分類番号(例:530)まで記入する必要はありません。メインとなる数字のみを記載する形で十分とされています。
「指示事項・特記事項」については、対面での目視などによる確認ができなかった場合や酒気を帯びていることが判明した場合に、どのような対応をしたのか記載しましょう。対面で確認して特に問題がなかった場合は、記入しなくても問題ありません。
記録表の様式(デザイン)を必要に応じて加工・変更するのは問題ありません。
ただし、各記録項目はそれぞれ記入することが義務づけられています。記録項目の省略や変更は、いずれも認められていませんので注意しましょう。
表の記入例は、以下の通りです。

※出典:一般社団法人千葉県安全運転管理協会「アルコール検査確認結果記録表の記載例」(PDF)
今回ご紹介したような記録表は、一般社団法人千葉県安全運転管理協会をはじめとしたさまざまな行政機関から配布されていますので、ぜひ活用してみると良いでしょう。
※参考:一般社団法人千葉県安全運転管理協会「確認結果を記録する書類様式」
また、アルコールチェックと同じく安全運転管理者に義務づけられている「運転日誌」と一体型の記録表も配布されています。こうしたものを活用することで、記入用紙の作成や記録の負担を減らせるはずです。

※出典:一般社団法人千葉県安全運転管理協会「運転日誌・アルコール検査確認結果記録表」(PDF)
※令和5年2月28日現時点では、アルコール検知器の使用は義務づけられていないため、「アルコール検知器を使用しなかった理由」などについて記載する必要はありません。
2-4. アルコール検知器チェックの義務化は2023年12月1日より開始
2023年3月、アルコール検知器が市場において十分に流通していないことから、日本全国の対象事業所において必要数を入手することが困難な状況になっていました。そのような状況を受け、アルコール検知器によるアルコール検査は無期延期となり、法律再施行の目処は立っていませんでした。
しかし、2023年6月8日に新たな方針が発表されました。
2023年12月1日に「アルコール検知器」を用いた確認の義務化をおこなう予定とし、パブリックコメントの募集を開始しました。
※参考:警察庁交通局「『道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案』に対する意見の募集について」
そして、2023年8月8日に発表された内閣府令により、2023年12月1日からの義務化が決定しました。
※参考:道路交通法施行規則等の一部を改正する内閣府令
2023年4月に実施された安全運転管理者向けのアンケートでは、アルコール検知器を「必要台数のすべてを入手済み」と回答したのは約70%となりました。半導体不足や物流停滞も改善し、安定したアルコール検知器の生産・供給が可能な状況になったとの判断がされています。
※参考: 警察庁「アルコール検知器使用義務化規定の適用について」
3. アルコールチェックの確認・記録に関するQ&A
ここからは、アルコールチェックの確認・記録に関する「よくある質問」と、その回答について解説していきます。
3-1. 取引先などに1日に数回往復する場合の対応は?
取引先に1日のうち何往復かする場合などには、アルコールチェックを繰り返し実施する必要はありません。ドライバーが運転業務を開始する前(最初)や出勤時、運転業務の終了後(最後)や退勤時に確認すれば問題ないとされています。休憩中に飲食店などを訪れた際にも、確認の必要はありません。
3-2. マイカーでも検査・記録の対応になるのか?
マイカーであるからアルコール検査・記録の対象とならないということはありません。社有車・レンタカー・マイカーにかかわらず、業務で使用する自動車はすべてアルコール検査と記録の対象になります。
3-3. アルコールチェックのアプリを導入しても良いのか?
記録要件を備えたものであれば、アプリやクラウドサービスなどの管理システムを用いて記録・管理をしても問題ありません。
ただし、導入しようとするシステムが法律の記録要件を満たさない場合には、当該システムと並行して不足している要件を別途記録する必要が生じます。
3-4. 運転前の検査でアルコールが検出された場合の対応は?
運転前の検査でドライバーが「酒気を帯びている」ことが確認された場合には、当然ながら酒気帯びの程度にかかわらず運転をさせてはいけません。
道路交通法65条にもとづき、ドライバーが少量でも酒気を帯びていることが判明した時点で、そのドライバーは自動車の運転が禁じられます。
「酒気帯び運転」の処罰基準は、「呼気1リットル中、0.15ミリグラム以上」とされていますが、これはあくまでも処罰の基準であり、数値以下であるから運転が許容されるわけではありません。留意しましょう。
企業は、ドライバーが検査に引っかかった際の対応について、あらかじめ検討しておくことが重要です。アルコールチェックでドライバーの酒気帯びが判明して運転できなくなった場合に「どのように対応するのか」をあらかじめ決めておくことで、現場の混乱を予防することができます。
3-5. 運転後の検査でアルコールが検出された場合の対応は?
運転後の検査で万が一アルコールが検出されてしまった場合には、企業はドライバーに対して厳正な対応を取る必要があります。たとえ従業員であっても、飲酒運転行為が明確であるならば警察に通報するべきでしょう。仮に飲酒運転を隠蔽した場合は犯人隠避などの犯罪に問われる可能性もあります。
出発時のアルコール検査では問題がなかったのにもかかわらず、業務後の検査でアルコールが検出された場合には、業務中に飲酒して飲酒運転をおこなった可能性が高いといえます。
企業としては、社員が危険な行動を犯さないよう、日ごろから社内で飲酒運転防止の啓蒙に取り組み、ドライバーの交通安全意識を高めることが重要です。
4. アルコールチェックの負担を減らすなら代行業者の活用も
アルコールの確認・記録・管理作業は、代行業者へアウトソーシングすることを推奨します。
代行業者は、ドライバーとの応対含むオンラインでの酒気帯び確認作業や、確認後のシステムへの記録作業を代わりに実施してくれます。
代行業者に業務を委託することで、アルコールチェック以外にもさまざまなタスクを抱えている安全運転管理者の負担を大幅に減らすことができます。
特に、早朝・深夜にドライバーが出退勤する企業は、アルコールチェックをアウトソーシングすることが必要になるでしょう。
アルコールチェックの担当者は、ドライバーの出勤時刻に合わせて朝早く出勤しなければならなかったり、ドライバーが退勤する夜遅くまで待機したりしなければなりません。そのような生活リズムでは担当者に多大な負担がかかってしまい、心身に不調をきたすリスクや、確認・記録・管理作業の抜け漏れが発生してしまうおそれもあります。
私たちパーソルワークスデザインのように24時間365日アルコールチェックを代行している業者に委託すれば、上記のようなリスクを払拭することが可能です。担当者がドライバーの帰社を待つことで生じる“無駄な残業時間”も削減することが期待できるでしょう。
5. アルコールチェックの代行ならパーソルワークスデザインへ

アルコールチェックは、法律にもとづいて適切に実施しなければなりません。
日ごろからドライバーの運転前後にはアルコールの有無を確認し、必要項目を記録するようにしましょう。記録要件を満たせば、紙やExcel、アプリ、クラウドサービスなど、任意の方法で記録・管理をしても問題ないとされています。
担当者のミスによるトラブル防止や、業務負荷を軽減するためにも、可能であればアウトソーシングサービスの活用を検討してみると良いでしょう。
私たちパーソルワークスデザインでは、お客様のニーズに合わせて24時間365日対応のコールセンターを完備しており、自社で体制を構築するよりも業務負担を減らした形で対応が可能です。アルコールチェックの義務化でお困りのことがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。